デジタル庁からの回答
マイナンバー制度・カードに関する 省庁ヒアリング
この報告第3回では、デジタル庁の回答の要旨とそれに対する会場での質疑・発言などを紹介します。
私たちはデジタル庁に対して、マイナンバー情報総点検、ひも付け誤りの対策とされている申請時のマイナンバー記載の「義務化」、マイナポータル運用の法整備などについて説明を求めました。残る個人情報保護委員会の回答については、第4回として報告する予定です。
【デジタル庁からの回答】
1)マイナンバー情報総点検について
その中でマイナ保険証等の、紐付け誤りのみを点検対象としている理由を説明されたい。
具体的には7月より現場におけるひも付け作業の実態把握を行い、そのひも付け方法の確認結果をふまえ、個別データの点検が必要なケースの整理を行い、9月上旬に個別データの点検機関を確定した。現在は点検作業中で、原則11月末までに確認を行うこととしている。
公金受取口座で誤った口座情報が登録された事案が発生しているが、こちらは別途確認を進めている状態と承知している。
2) マイナンバー記載の「義務化」について
「マイナンバー記載義務化」「統一的な手順の提示」においても、この扱いに変わりがないことを確認したい。
「横断的マニュアル」3 とよんでいる統一的な手順については、いま作成中。ただマニュアルを定めた後でも、先ほど言われた扱いが変わるということはないと考えている。
ひも付け誤りがあった事例は4情報でなく不十分な情報でJ-LIS照会したことによって起こったものが多いと承知している。4情報が揃っていれば個人の特定は可能と考えている。
3)マイナポータルについて
しかし2019年からAPI連携によって、マイナポータルから直接民間事業者等に、マイナンバーで管理する個人情報を提供する利用がはじまっている4。提供は本人同意によるとされているが、マイナポータルの運用については附則以外に法的な根拠はなく、個人情報保護が保障されていない。
マイナポータルの運用について、法律を整備する考えはないか。
法令上、具体的な根拠があるものではないが、番号法附則6条で国民の利便性向上をはかる観点から民間の活用の支援についてサービスを提供することが規定されているので、それをふまえて提供している。
API提供は民間事業者が誰でも使えるものではなく、利用規約を定め、事業者からの申請にもとづいてサービスが正しいものか判断し、システム上の安全措置等を講じて、個人情報が民間事業者で適切に取り扱っていただくよう行っている。適切な運用が行われていると承知しているので、法令の整備は現時点では考えていない。
民間とマイナポータルの間の連携が深まることによって不正なアクセスのリスクがあがるかについて。マイナポータルは基本的に「土管」のような役割を果たしており、マイナポータル自体には情報を持っていない。APIを使った情報取得は、いったん民間のアプリに入りそこからマイナポータルを利用して情報をとり、その情報を自分の意思を持って民間のアプリに流す形。
民間のアプリとマイナポータルの連携が拡大することによって不正アクセスで情報が漏洩するのかという点は、マイナポータルに情報を入れない形にしており、セキュリティ対策をしっかりおこなっており、個人情報の取扱いは厳格に行っていただけるように審査している。
【回答に対する質疑と会場意見など】
マイナンバー情報総点検について
なお地方自治体におけるマイナンバーの紐付け誤りに関する総点検で、デジタル庁は総点検マニュアルを示している。8月25日に【第1.0版】を示し、最新は【第2.1版】5。
マイナンバーを提供しなくても手続きは行われることを確認
デジタル庁が作成中の「横断的マニュアル」でもその扱いは変わることはないとのことだった。
4情報の照会でマイナンバーを確認できるなら、なぜ記入を求めるのか
であれば、なぜマイナンバーの提供を「義務化」するのかについては、「全件をJ-LIS照会にすると、職員が全ての申請にJ-LIS照会を行ってマイナンバーを取得することになり、マイナンバーの目的である行政の効率性の確保が果たされなくなるので、まずは本人から提出いただくことを第一にお願いしている。」との説明がされた。
しかしマイナンバーの提供を受ける際には、本人確認書類の提出やマイナンバーを記載した書類の管理など現場ではより手間がかかり、効率化に反すると参加者から指摘された。
政府がひも付け誤りをマイナンバー制度の構造的な問題ととらえずに、「人為的ミス」に責任転嫁して「総点検」するのは、トラブルを利用してマイナンバー記載とマイナンバーカードの提示を押しつけようとする意図があるのではないか。
法的根拠がないままマイナポータルの利用拡大
附則で想定していた利用は「情報提供等記録開示システム」の名のように、本人に対する自己情報と情報提供記録の開示や行政からのお知らせであり、民間事業者がマイナポータルを通して直接マイナンバー制度から個人情報を入手するような利用ではなかった。
法的整備が必要ない理由として、マイナポータルは「土管」のようなもので、マイナポータル自体で個人情報を保管していないからと説明された。しかしまさにAPIの仕組みにより、「土管」のようにマイナンバーで管理する個人情報が外部に流れ出てしまうことが問題だ。
*1 ヒアリングの予告詳細は » こちら を参照。すべての質問事項もPDFファイルで参照できます。
*2 デジタル庁、第1回マイナンバー情報総点検本部 (2023 年6月21日)資料2 »「マイナンバーによる情報連携の正確性確保に向けた総点検について」
*3 デジタル庁 » 「マイナンバー利用事務におけるマイナンバー登録事務に係る横断的なガイドライン【第1.0版】」(令和5年10月5日)。デジタル庁提供資料。
*4 デジタル庁 » 「自己情報取得API」 (Webサービスの利用者の同意・認証に基づいて情報を安全に取得し、Webサービスにおいて利用者が自らの情報を閲覧・利用することができるようにするためのAPIの解説と仕様) 。
*5 デジタル庁 » 「地方自治体におけるマイナンバーの紐付け誤りに関する総点検マニュアル」【第2.1版】(令和5年11月13日)。デジタル庁提供資料。
*6 情報システム学会マイナンバー制度研究会 » 「マイナンバー制度の問題点と解決策」に関する提言(2023年10月10日)
*7 デジタル庁 » マイナポータルAPI 仕様公開サイト 。(行政機関等が受付している手続について、Webサービスからオンライン申請することができるようにするための公開APIの解説と仕様)。
*8 個人情報保護委員会 公金受取口座誤登録事案に対する特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律及び個人情報の保護に関する法律に基づく行政上の対応について(令和5年9月20日)
*9 デジタル庁 マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善WG第5回(2022年8月25日) 資料2 » 「マイナポータルAPI(情報取得系)の現在地と将来像」 より3枚目のスライドを抜粋。もと資料は » こちら です。