マイナンバーはいらない

post by 40kara/WebEngine(Nt) at 2019.2.29 #247
戸籍 マイナンバー 戸籍情報連携システム 戸籍ネットワーク 副本システム 韓国家族関係登録制度

「戸籍とマイナンバー」学習会 シリーズ②
戸籍情報の連携とマイナンバー制度導入の危険性

 2019年通常国会に戸籍法の改定法案が提出されることになったようです。この法改定案は、戸籍に「マイナンバー」を導入することを含んでいます。法改定に向けた政府・法務省の考え方と今まで進められてきた戸籍のシステム化・ネットワーク化の動き、そして戸籍とプライバシーの関係や韓国の家族関係登録法/個人登録法について、共通番号いらないネットスタッフの井上和彦さんのお話(戸籍とマイナンバー学習会② 2018.7.12)をまとめました。
 「V 戸籍とは別の個人登録制度の可能性」では、2000年代に入って韓国で「戸主制度」が廃止され、新たに「戸籍」に変わる身分登録制度(家族関係登録法)が出来た経過を報告する中で、「目的別の身分登録制度」の可能性について考えます。

V 戸籍とは別の個人登録制度の可能性

» 法制審議会配布資料「戸籍法の改正に関する要綱案」

» 学習会②報告全文をPDFファイルでダウンロード

» 学習会②レジュメをPDFファイルでダウンロード

» 学習会②配布資料(その1)をPDFファイルでダウンロード

» 学習会②配布資料(その2)をPDFファイルでダウンロード

» 学習会① 法務省戸籍制度研究会「最終取りまとめ」を読む(原田)

» 学習会① 「家単位」の国民管理 vs 「個人単位」の国民管理 (遠藤)

13 韓国の家族関係登録制度と個人登録制度の可能性

 最後に、日本と同じような身分登録制度、戸籍制度があった韓国で、今、どういう家族関係登録制度に変わったのかをお話ししたいと思います。韓国では、情報人権運動といって、個人情報をめぐる基本的な人権を保障していく運動が行われています。

父母の姓をいっしょに使う「両系血統」の運動

 韓国では戦後もずっと戸主制度が残っていて、それに対して男女平等などの基本的人権を侵害する戸主制度を廃止すべきとの運動がずっとありました。

 ▲クリックで拡大縮小
「父系血統」を逆転した「両系血統」の家系図
 ホワイトボードに家系図みたいのを書きました(右の図。クリックで拡大縮小)。左側に書いたのがおじいちゃん・おばあちゃんがいて、末広がりに広がっていく家系図です。右側に書いたのは、韓国のWebサイトに「両系血統」というのがあるんですけれど、そこのトップに載っていた家系図なんです。本人がいて、お父さん・お母さんがいて、そのお父さん・お母さんがいてという図です。
父母の姓をいっしょに使う「両系血統」の運動
 韓国は父方の戸主制なので「父系血統」ということで左側の家系図だけ見ているけれども、そうじゃないんだ、それぞれ父がいて母がいて両方の血を引いている「両系血統」なんだという考え方です。子どもが生まれると、父の姓を名乗るというふうにされているけれど、父・母両方の血を引き継いでいるのだから、例えば、父がキムさんで母がパクさんなら、キム・パク・〇〇として父母の姓をいっしょに使う運動が進んでいます1。制度的ではなく通称だと思いますが。

「戸主制度」廃止でなくなった戸籍に代わる、身分登録制度の模索


 ▲クリックで拡大縮小
 韓国の戸籍制度がなくなった経緯は、戸主制度の廃止を求める運動があって、2005年2月に憲法裁判所が戸主制度は憲法に合致しないという決定をします。これを受けて、同年3月に戸主制度を廃止する改正民法が成立し、施行時期が2008年1月と定められました。
 それで戸主制度はなくなって戸籍制度もなくなるのだけれども、戸籍制度の代わりに新たな身分登録制度が必要だということで、各党がそれぞれの身分登録制度の案を出します。
政党と政府(大法院)が提案した「個人別の身分証明制度」の法案
 2005年9月に民主労働党は、「目的別身分登録法制定のための共同行動」(以下「共同行動」)と共同でつくった「出生・婚姻・死亡等の申告と証明に関する法律案」を国会に発議します。それから2005年12月に、開かれたウリ党が、大法院がつくった「身分関係の登録および証明に関する法律案」を発議します。韓国では戸籍制度を所管するのが日本の法務省に当たる法務部ではなく、最高裁判所に当たる大法院です。
 さらに2006年3月に、政府が「国籍および家族関係の登録に関する法律案」を提出します。つまり、3つの案が国会に提出されたんですけれども、いずれも、それまでの家族を単位、家を単位にしたものではなくて、個人別の1人1籍の身分証明制度の編製を原則とした、個人別身分証明制度として法律案が出されたのです。

国会の法制司法委員会が
「個人別の身分証明」制度を「家族関係登録」制度に転換した委員会案を
国会に提案して可決成立

 ところが、これを受けた国会の中の法制司法委員会が、この3件の法律案を廃棄し、委員会案として「家族関係の登録等に関する法律案」を代案として本会議に提案し、これが原案どおり可決されました。
 可決されたのが2007年4月で、2008年1月には改正民法が施行されて戸籍制度がなくなってしまうので、それまでに新たな身分登録制度をつくらなきゃならないわけです。猶予期間が8か月しかないというバタバタな状態の中でつくられたのが、家族関係の登録制度です。

登録基準地(本籍地)に登録する
「家族関係」の中での身分関係を証明する制度

 これは、まるっきり1人1籍の身分証明制度ではないんですね。法制司法委員会案と民主労働党案の比較を、「配布資料(その1)」のp.10の表2にまとめました(右の図をクリックで拡大表示)。「家族関係の登録等に関する法律」では、目的別に証明書を発行しましょうという制度になっているんです。表の左側は、今、施行されている「家族関係の登録等に関する法律」です。右側は、市民グループの民主労働党・共同行動がつくった案の証明書に関する部分です。
本籍に代わる「登録基準地」を設け
住民登録番号を記載する「家族関係登録」制度
 左側の「家族関係の登録等に関する法律」の例えば家族関係証明書というのを見ると、登録基準地というのが出ています。登録基準地とは、それまでの本籍に代わるものとして登録基準地と名前だけ変えたんですね。戸主制度はなくなったので戸主とか戸籍筆頭者みたいのはないのですが、登録基準地という架空の場所があってそこに身分登録するという形態がとられたんです。
 さらにそこには、住民登録番号が載っています。家族関係証明書だと、本人だけでなく家族全員の住民登録番号が載っているわけです。韓国の住民登録番号というのは、生年月日の数字がそのまま載っていたりとか、何桁目かのところの番号を見ると奇数か偶数かで男か女かわかってしまいます。そういうのもあって、性的少数者の方などは住民登録番号とか住民登録カードに番号が表示されることに対して非常に反対をしていたんです。
 現在のものは戸籍謄本とか抄本に代わって目的別の証明書にはなったんですが、相変わらず本籍に代わる登録基準地が載っていたり住民登録番号が載っていたりして、名前自体が「家族関係の登録」ということで、1人1人の身分証明制度というよりは家族関係の中で身分関係を証明していく色合いが強いので、市民グループのほうは批判しています。

目的別登録簿による、シンプルな身分証明制度の可能性

 一方、市民グループと民主労働党がつくった共同行動案のほうを見ると、そういった登録基準地といったものはなくて、代わりに住所が載っていたりとか至ってシンプルです。共同行動の名前にもあるのですけれど、目的別身分登録法制定ということで、目的別の登録簿があってそれで証明をしていくという制度をめざしていたのです。共同行動の人たちは、家族関係の登録の制度について、戸籍亜流の水準にとどまっていると言っています。家族関係というところで身分証明をしていこうという制度であったり、問題となっていた住民登録番号であったり、あるいは「本貫」というのが載っていたりすることを指摘しています。
 
Note

*1 1997年3月9日、「3月8日世界女性の日」を記念して開催された第13回韓国女性大会の最終日に、李李效再(イ・イ・ヒョジェ)ら170名が提案した「父母の姓ともに使うこと宣言」が採択され、これを契機に戸主制度廃止運動が進展した。

*2 » 学習会② 配布資料(その1) p.10

○本文構成・スライドと注作成:いらないネットWebエンジン(KT&NT)
◯学習会2 「戸籍情報の連携とマイナンバー制度導入の危険性」2018.7.12の記録を準備中:11月を予定
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