
「戸籍とマイナンバー」学習会 シリーズ②
戸籍情報の連携とマイナンバー制度導入の危険性
「II 法務省民事局における戸籍情報ネットワーク化の経緯」では、「マイナンバーの導入」に積極的ではないように見える法務省が1980年代から進めてきた、戸籍の「電算化」・ネットワーク化の経過を見ていきます。
II 法務省民事局における戸籍情報ネットワーク化の経緯
3 法務省民事局における戸籍情報ネットワーク化の経緯
1980年代:戸籍の「電算化」の調査研究
1990年代:「電算化」を認める法改定と「戸籍情報システム標準仕様書」の策定
戸籍とその周辺の事務を一元処理したかった戸籍情報システムの構想
標準仕様書の委託先は、丸投げ再委託で叩かれた民事法務協会から民間に変わった
2000年代:戸籍手続オンラインシステムに向けた戸籍法施行規則・戸籍統一文字
3.11東日本大震災:戸籍副本データ管理システムの導入
戸籍データをセンターに集めても、標準仕様書は機能していなかった
ネットワーク化はされていないが、
戸籍と住民票の相互参照を可能とする仕組みが作られている状態
*1 国や自治体などの行政関連機関で「電算化」という時は、最近普通に使われている「IT(ICT)化」とはまったく異なる意味を持つことに留意しておく必要がある。「電算化」は、80年代当時の「電子計算機化」、つまり大型コンピュータの技術を前提とするコンピュータ化で、当時普及が始まっていた「パソコン」や「インターネット」の導入ではなかった。大型コンピュータの技術は、メーカーごとに大きく異なり非公開だった(つまり標準化されていない)ため、異なるメーカー間、あるいは同じメーカーでも製品が異なる場合は、相互接続(通信)がきわめて困難。行政関連システムで本格的に「IT(ICT)」の技術を使うようになるのは、おそらく2002年の「住基ネット」以降である。
*2 前述したように、「電算化」はメーカー独自の技術を使うことを前提としていたため、この「ネットワーク化」も当初はインターネットの技術や回線などを使うことを意味していなかった。当時、インターネットは、日本における情報通信インフラとしては実用化・普及していなかった(その後1990年代に入ってから、急激な普及が始まる)。
*3 » 行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律
*4 「戸籍統一文字」は、法務省が、「電算化戸籍」で使用するために戸籍で実際に使われている文字の字形を整理した文字セット(民事局所管)。それぞれに6桁の戸籍統一文字番号が割り当てられ、戸籍事務・戸籍を記載する関連の事務で使用される。現在56000字以上が収録されているが、必要な場合は改定・追加が行われる。法務省の行政用統一文字としては、ほかに企業などの法人や不動産の登記事務で使われている「登記統一文字」(法務局所管)があり、戸籍統一文字の拡張版といわれるが、戸籍統一文字番号とは別の登記統一文字番号が割り当てられていて、そのままでは互換性がない。
これらとは別に、総務省が制定した「住民基本台帳ネットワーク統一文字」約2万字があるが、収録された字形の数は戸籍統一文字よりも少なく、各字形に割り当てられた番号も異なるため、戸籍統一文字との互換性はない。住民基本台帳事務および住基台帳を参照する複数の行政事務で利用される。
これら異なる文字番号を持つ行政用統一文字は、行政事務のネットワーク化の進行にともない混在して利用される場面が増えるため、文字コードの世界標準となっているUnicodeに、戸籍統一文字、住基ネット統一文字のすべての字形を、個別のコードを割り当てて登録することで文字番号の非互換を回避しようとしている。
参考: » wikipedia「戸籍統一文字」 など
*5 「戸籍副本データ管理システム」については、「戸籍とマイナンバー学習会 シリーズ①」の原田報告 » 「III 戸籍事務におけるマイナンバーの活用 を参照
*6 » 法務省「戸籍情報システム標準仕様書」のダウンロードページ







