マイナンバーはいらない

post by 40kara/WebEngine(Nt) at 2019.2.29 #247
戸籍 マイナンバー 戸籍情報連携システム 戸籍ネットワーク 副本システム 韓国家族関係登録制度

「戸籍とマイナンバー」学習会 シリーズ②
戸籍情報の連携とマイナンバー制度導入の危険性

 2019年通常国会に戸籍法の改定法案が提出されることになったようです。この法改定案は、戸籍に「マイナンバー」を導入することを含んでいます。法改定に向けた政府・法務省の考え方と今まで進められてきた戸籍のシステム化・ネットワーク化の動き、そして戸籍とプライバシーの関係や韓国の家族関係登録法/個人登録法について、共通番号いらないネットスタッフの井上和彦さんのお話(戸籍とマイナンバー学習会② 2018.7.12)をまとめました。
 「III 戸籍の法・制度上の目的と戸籍情報連携システム」では、「電算化」と限定的な「ネットワーク化」が進んだ現在の戸籍事務が抱えている、実務上のいくつかの問題と「戸籍の目的」について考えます。

III 戸籍の法・制度上の目的と戸籍情報連携システム

» 法制審議会配布資料「戸籍法の改正に関する要綱案」

» 学習会②報告全文をPDFファイルでダウンロード

» 学習会②レジュメをPDFファイルでダウンロード

» 学習会②配布資料(その1)をPDFファイルでダウンロード

» 学習会②配布資料(その2)をPDFファイルでダウンロード

» 学習会① 法務省戸籍制度研究会「最終取りまとめ」を読む(原田)

» 学習会① 「家単位」の国民管理 vs 「個人単位」の国民管理 (遠藤)

4 戸籍の公開制度と戸籍の附票を介した住民票との相互参照

 お手元の資料の「戸籍(戸籍法に基づき本籍地の市区町村長が管理/全部事項証明書記載例)」、および「戸籍の附票、住民票(除票)」(学習会配布資① p.2〜3)1 を見ていただきたいんですが、実際の戸籍とか戸籍の附票、住⺠票の記載例を作って載せてみました。

「戸籍」の記載例

 配布資料のp.2が「戸籍」(右の図のクリックで拡大表示)です。戸籍法に基づいて本籍地の市区町村長が編製して管理しています。ここで見てもわかるように、婚姻した男女と、あとここにはないんですけれど、未婚の子どもとその身分事項が載っている、というのが戸籍になります。

「戸籍の附票」と「住民票(除票)」の記載例

 配布資料のp.3には「戸籍の附票」と「住民票」(右の図のクリックで拡大表示)を載せてあります。「戸籍の附票」というのは何かというと、住民登録した住所の履歴がずらっと出ているんです。これは、住民基本台帳法に基づいて作られるもので、本籍地の市区町村長が管理している。本籍地に戸籍といっしょに保管されているもので、紙の戸籍のころだと、最初に戸籍があってその次に戸籍の附票が綴られるという形になっていました。
 右の図の下半分が、「住民票(除票)」で、これは住民票の写しになっている形です。

戸籍と住民票の「相互参照」

 「相互参照」とは、例えば、この住民票除票は、山田太郎さん・山田花子さんが神宮前1丁目に住民票があったわけですけれど、「平成5年4月3日不現住職権消除」と書かれています。転出届とか転居届を出さないでどこかに行っちゃった、ここに住んでいませんということで住民票が除票になってしまったということです。
 例えば、私たちが山田太郎さんにお金を貸していた金融関係の業者だったとして、ちゃんと利子を返してほしいので連絡を取りたいので、住民票を取ったら職権消除になっちゃったという場合を考えてみましょう。
「戸籍」を使った「住所の追跡」
 ちゃんと転出届とか転居届を出していれば、次にいつ、どこどこに転出・転居というのが載っているので、新しい住所を追えるわけですけれど、除票になってしまうと追えないわけです。そのときにどうするかというと、住民票には本籍と戸籍筆頭者名が載っているので、これをもとに本籍地の市区町村に戸籍の附票を請求すると、そこには職権消除された住所のあと新たに例えば住所設定で作られた新しい住所の履歴がずっと載っていて、最新の住所を追いかけることができます。
 こういうふうな形で住民票と戸籍のあいだでの相互参照というのができるんです。住民票には戸籍の表示(本籍と戸籍筆頭者)が記載されているので、戸籍の附票を調べれば最新の住所を追いかけられる。さらに戸籍によって身分事項などが調べられる。逆に、本籍地がわかれば、そこには戸籍の附票があるので、最新の住所が把握できるというようなことになっています。
「住所の追跡」の実態

 ▲クリックで拡大縮小
 例えば、資料のp.4には、ちょっと古いんですけれど、「住民票の写し等の交付・住民異動届出件数の状況」(平成17年度)があります。左側に平成17年度の全国の市町村の合計の住民票の写しの交付件数、戸籍の附票の写しの交付件数、住民異動届出の件数があります。右側は、全国の22の自治体から抽出した住民票の写し・戸籍の附票の写しの件数と、誰がそれを請求してきたかという割合が載っています。
「住民票」の写しの請求者

 ▲クリックで拡大縮小
 「住民票の写し」を見ると、ほとんど、64%が本人及び同一世帯の人なのですけれど、次に多いのが金融機関18.6%となっています。自治体などで戸籍の謄抄本とか住民票の写しの発行の事務をしていると、やはり金融機関、サラ金とかが債権を回収するためということで請求してくるのが多いです。
「戸籍の附票」の写しの請求者
 「戸籍の附票の写し」を見ると、多いのは本人よりも公務員47.9%です。たぶんこれは、ほとんどが警察とか検察庁などの捜査機関で、戸籍の附票だけではなくて、いっしょに戸籍の謄本も取る。刑事事件などで起訴するときに、本人の名前とか現住所を調べるために取るわけです。そのときの根拠法になるのが、刑事訴訟法なんです。第197条第2項「捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」と、これだけの条文なんですけれど、これによって捜査事項照会書という文書を使って、戸籍謄本、附票、住民票を請求しています。
 今、番号法で捜査機関が自由にマイナンバーを使って捜査情報に利用できるというような話もありますが、電算化していなくてももう既に紙の戸籍や住民票についてもそういった形で捜査機関のほうには利用されている状況があります。

5 戸籍副本の法務局・地方法務局への送付頻度 

「紙媒体戸籍」は、新たに編製したときおよび25年が経過したときだけだった

 ▲クリックで拡大縮小
 これは、先ほども説明したのですが、戸籍の記録を作るとき正本と副本があって、副本は法務省の地方法務局に送るのですけれど、昔は紙の戸籍だったんですね。その「紙媒体戸籍」の副本は、戸籍法施行規則第15条にどのくらいの頻度で送るかが書いてあります。戸籍を編製したとき、戸籍編製してから25年経過したとき、それから、その戸籍に載っている人が死亡や婚姻で全員除籍になったときに、1か月ごとにまとめて市区町村の副本を法務局に送りなさいとなっています。
 戸籍編製で一番多いのは、婚姻して夫婦で最初に戸籍をつくるときです。最初につくって夫婦が載っている正本と副本が出来て、その副本が法務局に送られるわけです。そのあと、子どもが生まれたりなんだりあると思いますが、25年たって初めて次の副本が送られていたのです。
「電算化戸籍」では、1年ごとに送付
「戸籍副本データ管理システム」は、「記録したとき、遅滞なく」送付
 それが、「電算化戸籍」2になると、1年ごとに磁気媒体で送りなさい、という話になります。さらに、先ほどの「戸籍副本データ管理システム」3が出来てからは、戸籍に記録したときには遅滞なくこの副本システムで送信しなさいということで、何か戸籍の届出があってなにがしかの記録をしたときはすぐに、逐一、法務局のほうにデータを送りなさいということが既にシステムとして作られています(戸籍法施行規則第75条)。

6 戸籍情報等の保存期間


 ▲クリックで拡大縮小
 次に、戸籍情報とか住民票の情報がどのくらい保存されているかです。

戸籍(除籍簿)は150年間保存

 戸籍に載っている人が全員死亡したり、婚姻して新しい戸籍に移ったりして、誰もいなくなったものを、除籍簿といいます。除籍簿になったものの保存期間が戸籍法施行規則第5条で定められています。昔は除籍してから50年保存、そのあと法改正があって80年保存になっていました。これが今、除籍年度の翌年から150年間保存となっています。
 配布資料のp.5(右の図のクリックで拡大表示)を見ていただくと、「住民票等の保存期間の変遷」が書かれています(住基法施行令第34条)。
 いちばん右側の縦の列が戸籍の「除籍簿」の保存期間で、50年だったのが80年になり150年になっています。

住基ネットの「本人確認情報」も150年

 同じく、右から2つめの列が「住基ネットの本人確認情報の保存期間」で、住基ネットが出来たとき、本人確認情報の保存期間は普通の人については5年、在外選挙人名簿に登録された人については80年保存ということだったんですけれど、マイナンバー制度ができて本人確認情報の中に「個人番号(マイナンバー)」が入るようになったときに、戸籍に合わせて150年保存に延長されました。
「150年間保存」というと...
 150年という時間の長さは、今、2018年ですが、150年前というのは1868年で、ちょうど江戸幕府が終わって明治が始まる年です。もしその当時マイナンバー制度があったとしたら、その年に死んだ、例えば沖田総司とか近藤勇の本人確認情報が、今年度末の来年3月にやっと廃棄されるということです。そんな長い期間、戸籍もそうだし、本人確認情報―――そこには住民票コードも載っているし、個人番号(マイナンバー)も載っているものが保存されるという制度になってしまった。

戸籍の附票と住民票の除票も150年間に延長しようとしている

 資料「住民票等の保存期間の変遷」の右から3つめの列は「戸籍の附票と住民票除票」の保存期間です(住基法施行令第34条)。今、通常の方は5年、在外選挙人名簿登録者は80年とか150年とかなんですが、これについても戸籍に合わせて150年に延長しようという動きがあります。
 いつの間にこんなに延ばされたのかというと、戸籍については戸籍法施行規則という法務省令によって、住民票とか戸籍の附票、本人確認情報については住民基本台帳施行令という内閣の決定(政令)によって延ばせる。国会での議論を経ないで法律の改定なしに、行政機関だけでできる。ここまで今、進んでしまった。で、ここで戸籍をネットワーク化したり、そこにマイナンバーを振ったりということが今、検討されようとしている4

7 戸籍の法・制度上の目的と戸籍情報連携システム(仮称)の管理主体


 ▲クリックで拡大縮小
 こういった状況の中で、戸籍をオンライン化していくことにどんな問題があるのかということを次に見ていきたいと思います。
 「戸籍法」という法律は、「戸籍って何?」(戸籍の定義)とか、「戸籍は何のためにあるの?」(戸籍の目的)については、何も書いていないんです5
目的が明示されない「個人情報」の大量収集
 戸籍法の第1条は、市町村長が戸籍事務を管掌するというところから書き始められています。戸籍法は、民法に対しての手続法なんだということが言われているんですけれど、何のためにそれだけの身分上の個人情報を収集するのかその目的は何も明記されていない。
 そのようなものをオンラインでつなぐということが果たしてどうなのか。まさにもう古い「由らしむべし知らしむべからず」という形で、目的をはっきりさせないままオンライン化するということが問題点の一つです。

法務大臣が戸籍情報を連携システムによって一括管理するのは「違憲」ではないか?

 それから、今回、誰がこの戸籍情報連携システムの管理主体になるのかということです。さきほど紹介した法務省法制審議会戸籍法部会の「中間試案」6のp.7「第2」のところを見ると、「法務大臣において戸籍情報連携システム(仮称)を構築するものとする」とあり、戸籍情報連携システムを構築するのは法務大臣ですよと書かれています。
 つまり、法務大臣が戸籍情報を連携システムによって一括管理するということが書かれているわけです。でも、住基ネットの最高裁判決のときに、実際には各地方自治体が共同でつくった全国センターが管理しているんだ、国が一元管理しているんじゃないんだ、だから違憲じゃないんだとしました7。それがあったので、マイナンバー制度についても国ではなくて地方公共団体情報システム機構(J-LIS)というところを一つ噛ませて、そこが管理しているんだ、国が一元管理しているんじゃないんだ、ということを言っていた。
 それが、この戸籍情報連携システムでは法務大臣がシステムを構築するんだと書かれています。これは、住基ネットの最高裁判決からしたら違憲なのではないか、というところを指摘しておきたいと思います。
 
Note

*1 » 学習会② 配布資料(その1)

*2 「電算化戸籍」は、「行政のIT(ICT)化」以前の旧型コンピュータ技術によってデジタル化された戸籍。 » 前のページの注1および2を参照

*3 「戸籍副本データ管理システム」については、「戸籍とマイナンバー学習会 シリーズ①」の原田報告 » 「III 戸籍事務におけるマイナンバーの活用 を参照

*4 行政機関が保有する個人情報の保護に関する法律第2条第2項は、「個人情報」を「生存する個人に関する情報」と定義していることに留意されたい。

*5 » 戸籍法 第1条などを参照

*6 法務省法制審議会戸籍法部会 » 「「戸籍法の改正に関する中間試案」の取りまとめ」 所収の中間試案

*7 例えば » 住基ネット大阪訴訟最高裁判決 p.12 などを参照

○本文構成・スライドと注作成:いらないネットWebエンジン(KT&NT)
◯学習会2 「戸籍情報の連携とマイナンバー制度導入の危険性」2018.7.12の記録を準備中:11月を予定
twitter@iranai_mynumber facebook@bango-iranai
次の記事 « » 前の記事