マイナンバーはいらない

post by nonumber-tom at 2023.10.14 #356
健康保険証の廃止 オンライン資格確認 新旧電子証明書 ひも付け誤り 携帯電話 本人確認 義務化 厚生労働省 省庁ヒヤリング

厚生労働省からの回答
マイナンバー制度・カードに関する 省庁ヒアリング

 9月28日、福島みずほ参議院議員事務所を通じて、厚労省・総務省・デジタル庁・個人情報保護委員会に、マイナンバー制度やマイナカードについてヒアリング1 を約30名の参加で行いました。
 この報告では、まず厚生労働省の回答の要旨とそれに対する会場での質疑・発言などを紹介します。
 私たちは厚労省に対して、健康保険証廃止と資格確認書や、申請時のマイナンバー記載の「義務化」などについて説明を求めました。他省庁などの回答については、別途報告する予定です。

●省庁ヒアリングの報告(2023.9.28)

 » 厚生労働省

 » 総務省

 » デジタル庁

 » 個人情報保護委員会

 

【厚生労働省からの回答】

1)健康保険証の廃止について

(質問)
 番号法関連法で6月2日成立した健康保険法改正では、資格確認書の新設は規定されているが、健康保険証の交付義務は省令事項のため法律上は規定されていない。
(1) 法改正で健康保険証の廃止が決定したとの説明がされているが、その法的根拠を明らかにされたい。
(厚生労働省の回答)
 国民健康保険法や高齢者の医療の確保に関する法律には、被保険者証の交付自体が定められており、2023年6月2日成立の番号法関連の法改正の中て、その規定を法律から削除している。
 健康保険法では、被保険者証の交付を法律ではなく省令(施行規則)で規定しているので、健康保険法に基づく健康保険証に限れば、まだ法律上の措置はなされていない。仮に省令改正をしなかった場合には、国保や高齢者は施行日を定めて廃止されるが、健康保険法だけ交付が残りつづけることになる。
(質問)
(2) 健康保険証の交付義務を規定した省令の改正予定があれば示されたい。
(厚生労働省の回答)
国保法や高齢者医療法における被保険者証の廃止は1年6カ月以内と定められているので、それにあわせて令和6年12月までには健康保険法施行規則の改正を行う方針になっている。
(質問)
(3) 重大な関心事となっている健康保険証廃止の省令改正は、厚労省内の手続きだけで決定するのでなく、国会の審議やパブリック・コメントを経て行うべきと考えるが、見解を示されたい。
(厚生労働省の回答)
 省令改正は行政手続法に基づいて原則パブリック・コメントを行う義務があるので、廃止するとなれば行政手続法に基づき必要なバブリック・コメントなど手続きを進めていきたい。

2)資格確認書について

(質問)
(1) 健康保険証と資格確認書の違いについて、健康保険証は全ての被保険者に交付をするのに対し、資格確認書はカードによる資格確認ができない場合に交付するものと説明されている2
 であれば健康保険証の交付を選択制にし、保険証が不要な被保険者は申請することにすれば同様の運用ができると思われるが、なぜ資格確認書としなければならないのか説明されたい。
(厚生労働省の回答)
 マイナンバーカードと保険証の一体化を進めているが、現行の保険証では過去の医療データを活用できないといった課題があり、今後はマイナ保険証で受診していただくことを基本に考えている。
医療保険の加入者であればマイナ保険証を使えない事情がある人にも保険診療を受けられるようにすることか必要と考えており、そういう方に向けて資格確認書を補佐的に発行するという立て付けにしたいと考えているので、選択制にはしていない。
 国民にとって過去の医療データに基づいたよりよい医療を受けていただくことを可能にするといった様々なメリットがあるので、今後の医療DXの広がりをふまえてこのような対応を基本とする。
 資格確認書の発行は、現行の保険証では全ての加入者に発行してきた取り扱いを改めるもので、現行の保険証とは発行の対象者が異なっているので、改正法の規定に基づき新しく資格確認書を創設することにしている。
(質問)
(2) 8月24日の社会保障審議会医療保険部会3で示された保険証廃止に伴う削減コストでは、印刷製本費と郵送費を試算しているが、資格確認書を交付するために必要になる新たな交付システムの概要と試算を示されたい。
(厚生労働省の回答)
 導入時のコストとそのあと平時のコストがあるが、8月24日の社保審医療保険部会で示したコストは、マイナ保険証に移行した後、平時のコストとしてどの程度かかるかを試算した資料。
 資格確認書の発行にともなうシステム改修は、既存の健康保険証の発行のシステムをできるだけ活用して効率的に実施することを想定しているが、今、具体の検討をしているところで、現時点で試算をお答えできない。
(質問)
(3) 法律上、資格確認書の交付には「電子資格確認を受けることができない状況にある」ことの確認が必要になるが、保険者がマイナンバーカードの不所持・紛失・更新・失効や、要介護や「ベビーシッターなどの第三者が本人に同行して本人の資格確認を補助する必要がある場合」などの事実認定をどのように行うのか説明されたい。
(厚生労働省の回答)
 各保険者において具体の事情を把握して法の趣旨をふまえて対応してもらいたいと考えている。どのように保険者が対象者を把握するか、保険者の意見をよく聞きながら合意をとっていく必要がある。施行までに資格確認書の運用をどうしていくか協議していきたい。

3)申請時等のマイナンバー記載義務化等について

(質問)
 厚労省は6月1日に健康保険法施行規則を改正し、資格取得届出等への個人番号の記載を義務化したと説明している。改正施行規則第24条では、資格取得届に記載する事項として「被保険者の個人番号」を新たに規定している。
(1) 健康保険法施行規則改正にあたり、パブリック・コメントを行わなかった理由を説明されたい。
 なお総務省では、資格取得届書への個人番号の記載の徹底を求める地方公務員等共済組合法施行規程の改正にあたっては、パブリック・コメントを実施している。
(厚生労働省の回答)
省令改正にあたってパブリック・コメントは令和5年4月18日から5月17日まで実施し、5月31日に結果公示している4
(質問)
(2) 厚労省はマイナンバー制度の開始にあたり、年金、保育、生活保護、雇用保険、障害福祉、介護保険など各事務で、個人番号の記載を求めるが本人の意思で記載されない場合は未記載でも受理し手続きは行うと説明してきた。その扱いに変わりがないことを確認したい。
(厚生労働省の回答)
 本人から申請による事務で、各個別法令でマイナンバーを記載することとされているものについては、原則として本人からマイナンバーの提供を受けることとされている。その規定にしたがい申請書にマイナンバーを記載して申請してもらうことになるが、申請者がマイナンバーを記載していないことをもって直ちに申請書を受け付けないという取り扱いにはしていない。参考に平成28年3月1日の衆議院総務委員会の議事録を示す5
(質問)
(3) 本人がマイナンバーの記載を拒み、j-LIS照会によってもマイナンバーを確認できなかった場合の扱いを示されたい。
(厚生労働省の回答)
 デジタル庁で現在実施されているマイナンバー制度総点検本部で、横断的ガイドラインを作成中で、基本的に8月8日に出されたパッケージ6において、原則4情報(氏名、生年月日、住所、性別)で照合する手続きをするようガイドラインが作成されることになっている。現在作成中で、作成されたらその手続きにしたがっていただくと考えている。ただマイナンバーを提出いただけない場合に申請自体を受け付けないという取扱いにはならない。

【回答に対する質疑と会場意見など】

健康保険証の廃止の法令的な手続きについて

 国民健康保険法等と健康保険法の違いが説明された。健康保険法上の健康保険証(被保険者証)の廃止については、パブリック・コメント後に省令改正により決まる扱いになる。

健康保険証廃止と資格確認書について

 6月2日に資格確認書を新設する健康保険法改正が成立したが、8月8日のマイナンバー情報総点検本部で、健康保険証廃止後に交付する資格確認書について、現在の健康保険証に近い取扱いとすることが示された7
 であれば、資格確認書ではなく健康保険証の交付が不要な人が申請する選択制にした方が余計なコストもかからず、無保険者も生まれず、施設等も困らず、保険者(健保組合、協会けんぽ等)の負担も軽くなるのではないか、説明を求めたが納得できる回答はなかった。
 厚労省の説明は、健康保険証交付の選択制と資格確認書のどちらにメリットがあるかは答えず、過去の医療データを活用するためにマイナ保険証での受診を原則としており、マイナ保険証を使えない事情のある人が保険診療を受けられるようにするため補助的に資格確認書を交付するという法改正の趣旨を繰り返すだけだった。
 この説明に対しては医療従事者から、そもそも患者の中には過去の医療データを見られたり利用されることを嫌がる人もあり、マイナ保険証の義務化はそういう人たちの意思を踏みにじることになるとの指摘がされたが、厚労省からはデメリットを感じる人の不安の払拭に取り組むという回答しかなかった。
 また薬剤情報や診療情報は過去3年分しか閲覧できないが、医療機関がそれを保存して流出することをどう考えているかと問いには、医療機関の情報管理一般のガイドラインなどをふまえた対応になるという説明だった。
 マイナ保険証で使う電子証明書は5年で更新が必要で、保険者はその有効期限を一人一人点検しながら資格確認書を発行するかきめなければならず、地方自治体は仕事が増え困惑しているとの指摘がされたが、有効期限切れを保険者が把握する仕組みが現状ではないことは課題で、把握の方法をシステム的にできないかを担当課とデジタル庁が検討しているという回答にとどまり、具体的な方法は説明されなかった。
 健康保険証廃止が決まった経過についても、福島議員より保険証はずっと使い続けられるという従来の国会答弁に反して廃止を決定した議論の経緯を、政府に問い合わせても明確な答弁がなく、議事録があれば示してほしいと求めたが、昨年10月13日に河野デジタル大臣と加藤厚労大臣が同日に方針を説明した、という回答しかなかった。これに対しては、河野大臣に振り回されているのでは民主主義ではないとの声が会場からあがった。

申請時等のマイナンバー記載義務化等について

 マイナ保険証のひも付け誤りの対策として、申請時のマイナンバー記載義務化が出されているが8、「申請者等にマイナンバーを記載していただく必要があるが、申請者等がマイナンバーの記載がないことをもって、市町村等で直ちに当該申請書を受け付けないという取り扱いにはしていない」という扱いは、今後も変わらないことが確認された。
 厚労省の説明の中で、住所・氏名・生年月日・性別の4情報でj-LIS(地方公共団体情報システム機構)に照会すればマイナンバーを確認できないことはないという認識が示されたことに対して、現実に4情報の照会で特定できなかったために氏名・生年月日・性別の3情報で照会してひも付け誤りが起きているのではないか、もし4情報で必ずマイナンバーを確認できるのであればマイナンバーを記載させなくても4情報の記載で良いのではないか、などのやりとりがあり、横断的ガイドラインの中で住基照会の方法の検討をしているとの説明があった。

Note

*1 ヒアリングの予告詳細は » こちら を参照。すべての質問事項もPDFファイルで参照できます。

*2 » 第211回国会参議院地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会令和5年5月12日会議録

*3 2023年8月24日第166回社会保障審議会医療保険部会資料2 » マイナンバーカードと健康保険証の一体化について

*4 パブリック・コメント結果公示:» 健康保険法施行規則等の一部を改正する省令案に関する意見募集に対して寄せられた御意見について

*5 2016年3月1日衆議院総務委員会会議録 » 田村(貴)委員の質問に対する安藤政府参考人(厚生労働省大臣官房情報政策・政策評価審議官)の答弁

*6 » 「マイナンバー制度及びマイナンバーカードに関する政策パッケージ」

*7 第2回マイナンバー情報総点検本部(2023年8月8日)資料 マイナンバー制度及びマイナンバーカードに関する政策パッケージについて p.14 » 令和6年秋の健康保険証廃止以降の資格確認書の取扱い

*8 第1回マイナンバー情報総点検本部 (2023年6月21日)資料2 » マイナンバーによる情報連携の正確性確保に向けた総点検について

twitter@iranai_mynumber facebook@bango-iranai
次の記事 « » 前の記事