学習会「戸籍へのマイナンバー導入は何をもたらすか」記録
その3 質疑討論
日本人が初めて経験する「個人単位」の国民管理をめぐって
II 「世帯主」や「扶養家族」が合理化されて
「個人単位」になった
*会場からの質問・意見などについては、発言ごとに「会場発言」と表示しました
会場発言 ちょっと思いつきでまとまってないかもしれないのですが、「世帯主」という概念がありますよね。システムを作る側としてはおそらく「税と社会保障の一体化」ということで考えている。そうすると、ついこの前、世帯単位で私のマイナンバーを書け、妻のマイナンバーを書けという形で、通知が届いているわけです。それから、去年マイナンバーの連絡があったときも、世帯で1通手紙が来た。その中に家族分のマイナンバーの通知カードが入っていたという実態があるのですね。マイナンバーは家族・親族単位の管理にも使える
「家」に番号をつけるという可能性について
「家」に付番することで、個人を「ばらばら」にさせないという管理
家族・血によってはぐくまれる共同体への愛着を感じる人は多いだろう
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*5 「世帯主」や「扶養家族」、「家族手当」という概念は、例えば非正規雇用しか経験していない若い世代には、実感のない言葉かもしれない。マイナンバーを戸籍との関連で考えるとき「世帯」や「扶養」という概念に注目するということは、「戸籍」を現在の「戸籍法」の範囲を超えて、遠藤さんのことばで言えば「戸籍の思想」――「家」が持つ伝統的な機能の範囲で考えるということだろう。
現在、私たちの「核家族」(現行の戸籍法では、「家」は夫婦と未婚の子で構成され、子は結婚したら「家」を出る。そして民法上の兄弟姉妹の相続権は平等になっている)は、「戸籍の思想」を濃厚に継承する「世帯」とも、敗戦前の「家」とも異なっている。それは「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本(憲法24条)」とする関係のはずだから、父系の長兄相続を前提として「扶養家族」を養う敗戦後の「世帯」とも異なるだろう。「住基ネット(住民票コード)」や「マイナンバー」は、日本の社会がそうした個人によって構成される社会へと移行してきたことが顕著になったとき登場した。
むろん、「世帯」や「家」が帰属していた親族集団は、個人の危機におけるセイフティーネットとして機能したが、現在の日本の核家族では、それはうまく働かなくなってきている。このため公共的な機関による「生存の保障」が必須なのだが、敗戦後の日本社会は「世帯」に強く依存してきたため、そうした公共の機能を十分に整備することができていない。
*6 遠藤講演に収録した図»「補足資料3 コンピュータ化庁における画像データで保存された戸籍情報の個人番号との紐付けの要否(参考資料)」参照。
◯構成・脚注:いらないネットWebエンジン(NT)/校正協力:TK