マイナンバーはいらない

post by nonumber-tom at 2024.10.16 #382
マイナ保険証 ヒアリング 厚労省 厚生労働省 説明

マイナ保険証についてのヒアリング 報告-2
厚労省の回答に対する質疑

 2024年9月26日の厚労省とのヒアリングでは、厚労省の回答1 に対して、参加者から「反対の多い健康保険証廃止はやめよ」「利用したくないマイナ保険証を押し付けるな」「資格確認書やマイナ保険証の利用登録解除をなぜ宣伝しないのか」「最新の正しい保険資格が表示されないシステムはポンコツ」「マイナ保険証でも成りすましは起きる」など多くの意見が出されました。
 今回は、これら意見とそれに対する厚労省の説明を紹介します。

健康保険証廃止に反対するパブコメの意見をどう受け止めているのか?

[1]健康保険法施行規則等改正のパブコメについて

問題マーク ●健康保険法等の省令から健康保険証の交付義務を削除する省令改正のパブリックコメントには、53,028件もの意見が寄せられました。厚労省が2024年8月30日に公表した意見募集結果でも、「現行の被保険者証は継続するべき」や「マイナンバーカードと被保険者証の一体化に反対」の意見や、厚労省の説明に対する疑問ばかりです2
説明マーク ■ヒアリングでも、担当者は「反対の意見の方が圧倒的に多かった」と答えました(後で「多かった」に訂正)が、賛否の割合の数値はこの場では答えられないということでした。
問題マーク ●これだけ反対があっても、保険証交付義務を削除する省令改正を見直さない厚労省に対して、「結論ありきでパブリックコメント制度を軽視している」「何を検討したのかわからない」「2023年6月に法改正して1年たっても利用率は低迷しているのだから方針を見直すべき」など、参加者から次々と声があがりました。

利用されないマイナ保険証の押し付けはやめて!

[2]マイナ保険証の利用状況について

問題マーク ●マイナ保険証の8月の利用率は12.43%にとどまり、5月~7月に「マイナ保険証利用促進集中取組月間」として医療機関へのマイナ保険証の利用圧力や利用促進のテレビCMなどを実施しても、月1~2%しか利用が増えていません。マイナポイントによって6割の人がマイナ保険証を登録していますが、みな健康保険証を使っています。
説明マーク ■利用者が嫌がっている状態でマイナ保険証に一本化することはありえないと指摘されても、厚労省は「より良い医療の提供のために、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行することが重要」と繰り返すばかりです。
 利用促進の方策も、不安を解消するためマイナカードの安全性を周知していくなどと、的外れの「対策」に努めようとしています。
問題マーク ●参加者からは、介護施設入所や在宅介護ではマイナ保険証に対応できず、マイナンバーカードを作ることも困難な状況が指摘され、「健康保険証を使い続けるようにすれば問題は解決する」「厚労省の説明は説得力がなく無理筋だ」と批判されました。

「資格確認書」の交付準備はどうなっているのか?

[4]資格確認書の交付について

問題マーク ●健康保険証は12月以降も有効期限がくるまで最大1年間利用可能ですが、転職転居などで失効するとすぐに資格確認書が必要になります。しかし厚労省は昨年12月22日に資格確認書の様式等について事務連絡3 を出して以降、具体的に交付について説明していません。
 そのため参加者から、「資格確認書がいつ交付されるのか、自治体の国民健康保険課に聞いても、厚労省から指示がないのでわからないと言われた」と、現場も対応に困っていることが報告されました。
 またマイナ保険証のない人には職権で資格確認書を交付すると言っても、対象にはマイナンバーカードを持っていてもマイナ保険証登録していない人や電子証明書の有効期限切れの人、マイナ保険証の登録を解除した人などさまざまな人がいます。
説明マーク ■どのような仕組みで職権で交付するのか説明を求めても、「システムはまだ構築中。現在、オンライン資格確認等システムではマイナンバーカードの交付情報や電子証明書の有効期限情報は持っておらず、その情報連携の仕組みを今テストしている」という回答です。
問題マーク ●いつどのように交付するかを早く周知しないと、現場も困り、市民も大丈夫なのかと不安が広がっていると、厚労省の対応の遅れが指摘されました。

なぜ資格確認書やマイナ保険証の登録解除の宣伝をしないのか?

[3]マイナ保険証の登録解除について

問題マーク ●マイナ保険証を登録した人は、登録解除しないと原則として資格確認書を受け取れません。当初、登録解除はできないとしてきた厚労省は、批判をうけて2023年8月8日の第2回マイナンバー情報総点検本部で発表した「政策パッケージについて」で、マイナ保険証の利用登録の解除を可能とし、資格確認書を交付すると変更しました4
 その後2024年2月9日に厚労省から保険者に「マイナ保険証の利用登録の解除について」の事務連絡をしていますが、市民には利用登録解除ができることをまったく伝えていません。そのため私たちが説明しても、「本当か?」と疑われています。
質問マーク ●このような厚労省の姿勢に対して、「マイナ保険証の利用に誘導するために、意図的に資格確認書やマイナ保険証の登録解除を隠しているのではないか」と疑っていることを伝えました。
説明マーク ■厚労省の担当者は、隠す意図はなく資格確認書の交付や登録解除についても周知していきたい、と述べましたが、12月までもうすぐです。マイナ保険証の利用促進と同じくらい資格確認書や登録解除についてもテレビコマーシャルなどをおこなって、マイナ保険証がなくても安心して保険診療を受けられることを宣伝してほしいとの意見には、参加者から拍手がわきました。

最新の正しい保険資格が表示されない「資格確認システム」はポンコツ

[5]5月15日の会計検査院の指摘への対応について

問題マーク ●医療現場では、依然としてオンライン資格確認等システムで最新の正しい医療保険資格が表示されないトラブルが続いています5。そのほとんどは、政府が総点検を終了したというマイナンバーと医療保険資格のひも付け誤りとは別の原因によるものです。その一因を会計検査院が指摘していました。
 2024年5月15日の会計検査院「マイナンバー制度における地方公共団体による情報照会の実施状況について」報告6は、マイナンバー制度が自治体では特定の事務以外はほとんど使われていないことを指摘しました。とくにマイナ保険証に関連する市区町村の国民健康保険事務と協会けんぽ・健保組合との間の情報連携が遅延することについて、その原因が自治体ではなく情報連携の仕組みにあることに言及しています。  
説明マーク ■厚労省はこの指摘に対して、保険者と事業主に対し新規資格取得から計10日以内に利用登録するよう省令で示し、保険者に改善計画の策定を求めていると説明しましたが、仕組みを見直すことは考えていないと答えました。
 さらに厚労省が保険者に対して、正しいデータ登録が行われるまで受診しないよう徹底することを求めていることについて、今の健康保険証でも同様の扱いだと答えました。しかし今は離職して国民健康保険に加入するときは、離職を証明する書類を持参すれば市区町村窓口で国保の保険証が交付され受診できます。マイナ保険証になると受診が抑制されるのでは、何が「より良い医療」でしょうか。
問題マーク ●最新の医療保険資格が表示されることが売り物のオンライン資格確認等システムで、巨額の費用を投じても保険資格が確認できずに、健康保険証や「資格情報のお知らせ」で確認を求めるようでは、何のためのシステムでしょうか。こんな状態で健康保険証を廃止することは許されないと、私たちは指摘しました。 

マイナ保険証でも、他人が成りすまして受診することは技術的に可能

[6]保険証の成りすましについて

問題マーク ●マイナ保険証で便利になるという厚労省の説明は、次々と事実ではないことが明らかになってきました。そこで厚労省はもっぱら「医療情報を閲覧してより良い医療を受けるため」と強調していますが、厚労省の調査でも「個人情報がまとまって管理されることが不安だ」「医師、歯科医師、薬剤師に過去の薬剤情報や特定健診情報などを提供したくない」と多くの回答がありました7(図参照:クリックで拡大縮小)。自己情報コントロール権が保障されないマイナ保険証では、医療情報が提供されることをデメリットと感じる人が少なくありません。
 そこで最近デジタル大臣は、現行の保険証は偽造・なりすましを防げないので存続できない、ということを強調しています。しかし厚労省の担当者は、偽造やなりすましなどの不正利用の件数を把握することは困難と説明する一方、マイナ保険証でもなりすまし受診は技術的に可能だと認めました。
 平デジタル大臣は、今の健康保険証はICチップも顔写真もなく「悪用しようと思っている人たちからは、非常に付け入る隙が多くある」8 と述べていますが、マイナ保険証も他人に渡して暗証番号を教えれば、別人がカードリーダーを使い他人になりすまし受診することが可能です。
説明マーク ■デジタル大臣や厚労省の担当者は、マイナカードと暗証番号を他人に渡すのは不適切だと言いますが、そう言っても何の防止策にもなりません。必要に応じて本人確認をすると言いますが、窓口の職員が見えないところでカードリーダーを使われればわかりません。

なぜ「資格情報のお知らせ」を全員に送っているのか?

問題マーク ●協会けんぽは9月から全加入者に「資格情報のお知らせ」を送付しています9。国保など他の保険者も、順次送付をはじめています。
 これは厚労省がマイナンバーと医療資格情報のひも付け誤り対策として、全加入者にマイナンバーの下4桁を通知して誤りがないか確認するよう求めているためです。あわせてマイナ保険証では券面では医療保険情報がわからないため、確認用に医療保険情報を送付してマイナ保険証と一緒に利用するよう勧めています。
 いろんなカードがマイナカード一枚に集約でき便利、と宣伝していたのに、現行では1枚の健康保険証で足りるのが、マイナ保険証では2枚必要になっています。
質問マーク ●この「資格情報のお知らせ」について、マイナ保険証未登録者は「資格確認書」で資格情報がわかるのでお知らせは不要とされていたにもかかわらず、なぜ全加入者に送っているのか、システム構築が遅れ送付不要の加入者がわからず仕分けができないので全員に送ったのではないか、と質問しました。
説明マーク ■厚労省からは、「今の時点では協会けんぽは誰が利用登録しているかは分からない。仕分けができないからではないと思うが、なぜ全員に送ったかはわからない」という説明でした。保険者が困っている状況を、厚労省が把握していないのではないか不安になります。
説明マーク ■またそれだけでは医療機関を受診できない「資格情報のお知らせ」を「資格確認書」と誤認している人がいること、「資格情報のお知らせ」には資格確認書や登録解除の説明がなくますます不安を煽っていることなど問題が多く、12月以降医療機関でトラブルが起きたらどう責任をとるのかと聞きましたが、「トラブルがないようにする」という以上の回答はありませんでした。

医療機関が患者にマイナ保険証を使わせる義務はない

問題マーク ●厚労省は8月30日の社会保障審議会医療保険部会の資料1で、マイナ保険証の利用促進策として
  • 「マイナ保険証の利用実績が著しく低い医療機関・薬局の中には、患者がマイナ保険証を使う機会を奪っているものも考えられ、その場合には、療養担当規則違反となるおそれがある。」
  • 「マイナ保険証の利用実績が著しく低い医療機関・薬局に対しては、マイナ保険証の利用促進に当たり困っている場合の支援や地方厚生局が個別に事情を確認する等の働きかけを実施。」
と書いています10
スライド
説明マーク ■これに対して、「マイナ保険証を使う使わないは患者の意思。医療機関が患者に使わせる義務はあるのか」と聞くと、「医療機関にマイナ保険証を使わせる義務はない。利用を声かけする義務もない」と認めました。「それならなぜ利用実績が低いことを医療機関の責任にして地方厚生局が事情確認するのか」と質すと、どういう状況にあるのか確認する趣旨で、利用実績が低いことを理由に個別指導する趣旨ではない、と釈明しました。
問題マーク ●しかし「療養担当規則違反」の可能性があるとして、保険医療機関の資格を取り消す権限のある地方厚生局が事情聴取するというのは、医療機関には大変なプレッシャーであり、単に事情をうかがうのとは違います。
 患者の意思でマイナ保険証を利用していなければ指導の対象にはならない、と厚労省は答えています。事情を聞くのであれば保険資格取り消しの権限がないところが問い合わせることを、参加者から求めました。

Note

*1 » マイナ保険証についてのヒアリング 報告-1 厚労省の回答 要旨 共通番号いらないネット

*2 » 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令案に関する意見募集の結果について 厚生労働省保険局国民健康保険課、2024年8月30日

*3 » 資格確認書の様式等について 厚生労働省 2023年12月22日

*4 » マイナンバー制度及びマイナンバーカードに関する政策パッケージについて マイナンバー情報総点検本部第2回 2023年8月8日

*5 » 医療現場のトラブルは未解決! 2024年5月以降のマイナトラブル調査(中間集計)1万医療機関からの回答 9月19日(木)保団連記者会見 全国保険医団体連合会 2024年9月19日

*6 » マイナンバー制度における地方公共団体による情報照会の実施状況について 会計検査院 2024年5月15日

*7 マイナ保険証の利用促進等について 3ページ右グラフ「<不安・懸念を感じている方の割合>」。第181回社会保障審議会医療保険部会(2024年8月30日)資料1 

*8 » 平デジタル大臣記者会見(令和6年10月8日) 要旨。2024年10月8日

*9 » すべての加入者様に対し資格情報のお知らせと加入者情報を送付します 協会けんぽ

*10 » マイナ保険証の利用促進等について 7ページ「マイナ保険証の更なる利用促進の取組について」。第181回社会保障審議会医療保険部会(2024年8月30日)資料1 

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