マイナンバーはいらない

post by nonumber-tom at 2024.10.13 #381
マイナ保険証 ヒアリング 厚労省 厚生労働省 要旨

マイナ保険証についてのヒアリング 報告-1
厚労省の回答 要旨

2024年9月26日に行った、厚労省・総務省に対するヒアリングから、今回は厚労省の口頭での「回答」の概要をまとめて報告します。12月からの保険診療に多くの不安や疑問の声が寄せられている中で、健康保険証廃止に反対が多いことをどう考えているかや、資格確認書やマイナ保険証の登録解除がどうなっているのかなどについて聞きました。
 健康保険証新規交付の終了が2024年12月1日に迫る中、政府がマイナ保険証の利用促進のPRに終始しているため、12月からの保険診療に多くの不安や疑問の声が寄せられています。
 9月26日厚労省に対して福島みずほ参議院議員事務所を通じて、健康保険証廃止に反対が多いことをどう考えているかや、資格確認書やマイナ保険証の登録解除がどうなっているのかなどについてヒアリングを行いました1
 厚労省に対して、医療保険制度の利用者の立場から差し迫って明らかにしてもらいたい点として
  • ●健康保険証廃止反対の意見が多いことや、マイナ保険証の利用率が低いことを、どう考えているのか?
  • ●マイナ保険証の利用登録解除は、いつから、どのようにおこなうのか?
  • ●「資格確認書」の交付対象を広げるべきではないか?
  • ●医療保険資格が正しく表示されないトラブルは、12月までに解決できるのか?
  • ●マイナ保険証でも、他人が成りすますことはできるのではないか?
  • ●マイナ保険証が一因となって医療機関が閉院していることを、調査し対策しているか?
などを聞きました2
 厚労省担当者の説明の要旨を報告します。

「健康保険証交付義務の削除に反対する5万件の意見について、
どんな検討をしたか?

[1] 健康保険法施行規則等改正のパブコメについて

 5月24日~6月22日に健康保険法施行規則から健康保険証の交付義務を削除する等の改正案のパブリックコメントが行われ、8月30日に結果が公表された3
質問マーク

(1) 省令改正予定とされた7月上中旬を1カ月以上経過して公表されたが、遅延した理由は何か。省令改正はいつか。

回答マーク ■意見を多くいただき、精査した結果、1か月以上経過した。省令は8月30日に公布した。
質問マーク

(2) 53,028件という多数の意見が提出され、その多くは現行の被保険者証の継続やマイナンバーカードと被保険者証の一体化に反対するものだった。パブリックコメントは「事前に広く一般から意見を募り、その意見を考慮することにより行政運営の公正さの確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益の保護に役立てることを目的」として行われるが、意見を受け省令改正をどのように検討したか。

回答マーク ■省令改正のみなず、今後の政策についても検討した。皆さまから不安の意見をいただいたので、今後の周知や利用の案内も含めて検討した。  
質問マーク

(3) 意見集約表の5で「何らかの理由によりマイナンバーカードを使えずに電子資格確認を行うことができない場合の資格確認の方法については、既にお示ししているところではありますが、改めて、この省令とは別に今後お示しする予定です。」と答えているが、既に示した文書と、今後示す文書を説明されたい。

回答マーク ■資料としてフロー図をお示しする4。マイナポータルの資格情報画面や、健康保険証や過去の受診歴で確認し、初診で示すものがなければ「被保険者資格申立書」に記載いただき、保険診療を受けられる。今回の省令の中で大臣が定める告示を設けることとしており、そういったものについては別途お示しする。  
質問マーク

(4) 昨年9月28日の福島事務所のヒアリングでは、国民健康保険等については2023年法改正で健康保険証交付規定は削除されたが、健康保険法等では省令で交付義務が規定され、法施行までに省令改正を予定しているが省令改正までは法的には健康保険証廃止は決まっていないと説明された5
 省令改正前に厚労省が「本年12月2日から現行の健康保険証は発行されなくなります」とあたかも決定されているかのようなチラシ配布等を行っているのは誤りではないか。

回答マーク ■昨年の説明は、健康保険証は省令にしか記載されておらず、省令改正までは存在するという趣旨。法改正は12月2日より施行すると政令で定めており、その後は法律に則った運用になるので、誤りではない。

マイナ保険証の利用率が低迷していることを、どう考えているか?

[2]マイナ保険証の利用状況について

 5月~7月に「マイナ保険証利用促進集中取組月間」を設定してさまざまな利用率向上策を実施しても、利用率は毎月1~2%しか増えず、7月の利用率は11.13%にとどまった。
質問マーク

(1) 利用率が低い理由をどう考えるか。厚労省は医療機関等や保険者に利用率向上を働きかけているが、向上しない理由は被保険者がマイナ保険証の利用を望まないからではないか。

回答マーク ■理由として、保険証の運用がまだされていること、医療機関の側で健康保険証などお持ちでしょうかという声かけをしていること、マイナンバーカードの紐付けの誤りでまだ不安に思う方がいることなどを考えている。
質問マーク

(2) 厚労省はマイナ保険証を使うメリットとして、医療情報の閲覧でよりよい医療が受けられると説明しているが、マイナ保険証を使いたくない理由として医療情報の閲覧をあげる人も少なくない。8月30日の第181回社会保障審議会医療保険部会資料1では厚労省の調査結果として、マイナ保険証に不安・懸念を感じている理由の4割が「個人情報がまとまって管理されることが不安だ」、18%が「医師、歯科医師、薬剤師にどこまで情報を見られるのかわからず不安だ」、13%が「医師、歯科医師、薬剤師に過去の薬剤情報や特定健診情報などを提供したくない」と答えている6
 受診の際に閲覧の「同意」を求めるが、この仕組みに対して日弁連は保険資格情報と診療・薬剤情報・特定健診情報等との包括的連携を拒む手続が保障されていないことや、医師から提供の必要性について説明を受けないうちに「同意」を求められ、同意も一括となっている仕組みは、自己の医療情報の「コントロール権」をないがしろにしていると指摘している7。利用率向上のためにオンライン資格確認等システムのプライバシー保護を改善する考えはないか。

回答マーク ■受診の都度同意いただいて医療機関に提供し、勝手に医療機関に情報が行くことではない。システムの見直しの検討はしていない。

マイナ保険証の利用登録解除は、いつから、どのようにおこなうのか?

[3]マイナ保険証の登録解除について

 厚労省はマイナ保険証の利用登録解除の受け付けを、10月頃から始めるとしている。12月2日以降も健康保険証は最大1年間有効だが転職・転居等で失効することもあり、登録解除手続きについて早急に被保険者に周知する必要がある。
質問マーク

(1) いつから解除申請の受け付けをはじめる予定か。いつ周知するか。

回答マーク ■2024年2月に示した事務連絡8で、10月末ごろ目途に開始と案内した。それに向けて今テスト中で、運用が固まり次第周知する。
*10月9日に厚労省は保険者に対して新たな事務連絡を出しました9
質問マーク

(2) 利用登録解除は、被保険者全員、少なくともマイナ保険証登録者全員に周知される必要があるが、どのように周知するか。

回答マーク ■利用登録の解除をこのタイミングで保険者から通知するのは難しい。まず厚労省のホームページなどで周知してまいりたい。
質問マーク

(3) マイナ保険証の登録をしているか否かを被保険者はマイナポータルで確認するよう求めているが、マイナポータルを利用できない場合に登録の有無を確認する方法は何か。

回答マーク ■医療機関でマイナンバーカードをかざしていただくと、利用登録されているか確認できる。
質問マーク

(4) 登録解除のために必要となる情報連携の仕組みのわかる資料を示されたい。

回答マーク ■2024年2月の事務連絡を参照8。利用登録解除は保険者に申請いただき、その情報を保険者から社会保険診療報酬支払基金に連携して、ひも付けを解除する。
質問マーク

(5) 登録解除の仕組みの導入は保険者の負担となるが、全保険者が登録解除を実施できるようにするため、どのような支援を講じているか。

回答マーク ■支払基金と保険者で改修が必要。両方とも国で支援、補助を行ないながら進めている。

「資格確認書」の交付対象を広げるべきではないか?

[4]資格確認書の交付について

 障害や高齢等により「その他保険者が必要と認める場合」は、マイナ保険証を登録していても資格確認書を申請により交付できるとしている。
質問マーク

(1) 「保険者が必要と認める場合」「何らかの理由によりマイナンバーカードを使えずに電子資格確認を行うことができない場合」とはどういう場合か、具体的に示されたい。

回答マーク ■「保険者が必要と認める場合」は、マイナ保険証をお持ちでマイナ保険証を利用する意思がありながら、障害、高齢、付き添いなどマイナ保険証を使うのが難しいと認められる場合。
 「何らかの理由により」は、例えばマイナ保険証を登録したままマイナンバーカードを紛失してしまった場合などを想定。
質問マーク

(2) それ以外の理由でも、保険者が必要と判断すれば資格確認書は交付可能か。

回答マーク ■(1)の理由が個々の事情から判断できる場合は可能。
質問マーク

(3) 勤務先に登録解除申請をすることが困難な場合も考えられる。マイナ保険証の利用率が1割程度の状況を踏まえれば、「マイナ保険証を利用したくない」場合も申請により資格確認書を交付すべきではないか。

回答マーク ■健康保険証が最大一年間は有効期限がくるまで利用可能ということを踏まえ、そこに向けて利用促進をしていく。マイナ保険証をお持ちでない場合は、資格確認書を交付する。
質問マーク

(4) 岩手県や長野県の保険医協会の市町村へのアンケート調査10 によれば、資格確認書を「申請があった場合に交付する」と回答している市町村がある。マイナ保険証がないにも関わらず、申請がなければ資格確認書を交付しない扱いも認められるか。

回答マーク ■個々の事象については対象が分からないが、こちらの方から確認した限りはこのような回答しているところは認められなかった。マイナ保険証をお持ちでない方には、資格確認書を当面の間は申請によらず交付することを周知徹底する。

医療保険資格が正しく表示されない原因は、解決できるのか?

[5]5月15日の会計検査院の指摘への対応について

 医療機関では、保険資格が正しく表示されない状態が続いている。その一因として会計検査院は今年5月15日の「マイナンバー制度における地方公共団体による情報照会の実施状況について」11 で、医療保険関係情報の登録の遅延を指摘し、協会けんぽで事業主が日本年金機構に届出を提出し、審査後に協会けんぽに情報を伝え資格情報を更新していることなどを述べている。
質問マーク

(1) 厚労省はこの報告を受けて、保険者にデータ登録の迅速化を求めているが、この遅延は2017年の情報連携開始以降改善していないため、多くの市区町村は国保加入の際に本来不要な離職の証明の持参を求めてきた。健康保険証交付終了までに解決するのか。

回答マーク ■会計検査院の指摘をうけ、新規資格取得から計10日以内に利用者登録をすることを省令にし、令和6年6月より繰り返し求めている。各保険者にチェックリストを参考に点検を行ない、改善計画を策定し速やかに必要な取り組みを行うよう求めている。
質問マーク

(2) 厚労省はこの報告を受けて、「マイナ保険証を基本とする仕組みへの移行を進めるため、マイナ保険証により医療機関等を受診した際、データ登録が行われないまま受診することがないよう」保険者から加入者に徹底することを求めている12。保険資格があるにもかかわらず受診の抑制を求めるのは、医療保険制度に反していないか。

回答マーク ■タイムラグによりデータ登録が行われないまま受診しないようにというのは、今の健康保険証の新規発行の際も同じような取り扱いをしている。
質問マーク

(3) オンライン資格確認等システムにより、保険者は個人番号の確認や世帯情報の確認など新たな事務が必要になっていることが、資格情報の登録に時間を要する一因になっている。「迅速化」を求めるより、システムの見直しが必要ではないか。

回答マーク ■個々人の医療情報を正確に個人として把握するには、今のようなシステムでやっていくのが重要で、今の仕組みを見直すことは考えていない。
質問マーク

(4) 現在は離職の挙証資料を市区町村に提出すれば、その場で国民健康保険証を受け取れる。データ登録を迅速化しても、現状より不便ではないか。

回答マーク ■挙証資料を必要とせずに資格取得ができるようになるので、不便になるということはない。
質問マーク

(5) 厚労省はマイナ保険証で正しく保険資格の確認が行えなかった場合、12月1日まではマイナポータル画面か健康保険証で確認するよう求めている。マイナポータルを利用していない方は多く、12月2日以降、健康保険証がなければ確認が困難にならないか。

回答マーク ■保険者から「資格情報のお知らせ」をマイナ保険証登録をしている方たちにお送りし、マイナンバーカードと合わせて提示すると受診が可能になる。

マイナ保険証でも、他人が成りすますことはできるのではないか?

[6]保険証の成りすましについて

 河野デジタル大臣は健康保険証の交付を続けられない理由として、現行の保険証は偽造・なりすましを防ぐことができないから、と説明している13
質問マーク

(1) 現行の健康保険証による成りすまし不正利用の状況(内容、件数)を示されたい。

回答マーク ■総数を把握することは困難で数値は持ち合わせていない。国保の場合、警察に被害届等して確定したものであれば、2017年から2022年の過去5年間で不正利用件数は計50件。
質問マーク

(2) マイナ保険証でも、マイナカードを他人に貸し暗証番号を教えて、受診時に顔認証ではなく暗証番号入力をした場合、成りすましは可能ではないか。社保基金と国保中央会による「オンライン資格確認等システム運用マニュアル」14 には、暗証番号認証を行う際、明らかに本人であることに疑いがある場合は患者に本人確認書類の提示を求める対処が説明されている(3.00版88ページ)。

回答マーク ■確かに技術的にはそのような受診もできないわけではないが、マイナカードと暗証番号を他人に渡すのは適切ではない。顔写真で本人確認も必要に応じておこなう。

マイナ保険証は、地域医療を損なっているのではないか?

[7]医療機関の閉院について

 オンライン資格確認等システムの導入の負担が一因となって、医療機関が廃業していると指摘されている。
質問マーク

(1) オンライン資格確認等システムの導入の「療養担当規則」を定めた2022年9月以降の、閉院の状況とその理由について調査しているか。

回答マーク ■オンラインシステムの導入に伴う閉院はなかなか把握することが難しく、把握していない。
質問マーク

(2) 働き方改革の「2024年問題」でバスなど地域交通の減少が起きているなかで、身近な医療機関の閉院は医療へのアクセスをますます困難にする。閉院を増やす可能性のある施策を、当面見合わせるべきではないか。

回答マーク ■オンライン資格確認システムの導入が直接的な閉院の原因になっているということは必ずしもない。対応できないというところは経過措置で導入を猶予している。
質問マーク

(3) オンライン資格確認等システムが閉院の原因となっている場合、医療機関の閉院は地域医療を損ない「よりよい医療の提供」というマイナ保険証の導入目的に反するのではないか。

回答マーク ■より良い医療の提供がオンライン資格確認のメリットで、地域医療を損なうものではない。

Note

*1 » 院内集会&厚労省・総務省ヒアリング いま、マイナ保険証&マイナカード本人認証について解明していく 共通番号いらないネット

*2 » 厚生労働省に提出した質問事項 共通番号いらないネット

*3 » パブリックコメントの結果(e-govパブリック・コメントのページ「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令案に関する意見募集の結果について」2024.8.30

*4 » フロー図 厚労省がヒアリングにおいて提供。「マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合の対応(12月1日までの取扱い)」など

*5 » 厚生労働省からの回答 マイナンバー制度・カードに関する 省庁ヒアリング 「1)健康保険証の廃止について」の質問(1)に対する回答参照。2023年9月の厚労省ヒアリングの報告。共通番号いらないネット

*6 » マイナ保険証の利用促進等について 3ページ 「マイナ保険証利用促進集中取組月間における取組について~ 周知広報 ~」。第181回社会保障審議会医療保険部会(2024年8月30日)資料1

*7 » マイナ保険証への原則一本化方針を撤回し、 現行保険証の発行存続を求める意見書 日本弁護士連合会

*8 » マイナ保険証の利用登録の解除について 厚生労働省2024年2月9日事務連絡

*9 マイナ保険証の利用登録解除の運用について 厚生労働省2024年10月9日事務連絡

*10 » 健康保険証廃止に伴う「資格確認書」送付等に関するアンケート集計結果 岩手県保険医協会の調査(5月20日~5月31日 33自治体)

  » ~有効期限など把握出来ず資格確認書発行で自治体困惑~ 自治体への資格確認書発行に関するアンケート 長野県保険医協会の調査(5月13日~7月19日 77市町村) 

*11 » マイナンバー制度における地方公共団体による情報照会の実施状況について 会計検査院2024年5月

*12 » マイナ保険証の利用促進等について 9ページ 「保険者におけるデータ登録の迅速化と受診時のマイナ保険証による資格確認の円滑化に向けた対応」。第179回社会保障審議会医療保険部会(2024年6月21日)資料1

*13 » 河野デジタル大臣記者会見要旨 デジタル庁、2024年8月8日

*14 » オンライン資格確認等システム運用マニュアル 3.00版 88ページ。社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険中央会。2024年4月1日

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