マイナンバーはいらない

post by nonumber-tom at 2017.4.2 #165
マイナンバー 省庁交渉 費用対効果 稼動予定 国家公務員

国家公務員にマイナンバーカード取得は強制できない
内閣官房回答

 共通番号いらないネットは、私たちに寄せられた様々な疑問について、3月3日関係省庁から説明を受けました。
 内閣官房に対しては、マイナンバー制度の費用対効果、マイナポータルの予定、国家公務員身分証とマイナンバーカードの一本化の3点を質問。効果の試算はできていないこと、マイナンバーカードを持たない国家公務員には紙の身分証明証と一時通行証という代替措置を講じていることなどが明らかになりました。
 内閣官房に対して以下の3点の質問をし、口頭で回答がありました。

マイナンバーシステムの効果はまだ示せない

質問 1)費用対効果について

 2016年2月12日に回答された、マイナンバーシステムの費用対効果について。運用が始まったら国民に分かりやすく示したいと回答されていた。いつどのように示されるのか。

<回答要旨>

 国民に費用対効果を示すことは、多額の税金を投入してシステム開発を行っているので重要だと考えているが、具体的にいつ示すかを今日は示せない。
 一定の前提をおいた粗い試算は、平成26年6月3日に政府のIT戦略本部で当時の甘利担当大臣から提出している(»「マイナンバー制度の効果」首相官邸)。
 国会や経済財政諮問会議からもより実態に合わせた効果の検討を求められており、2017年度中にはまとめたい。
無駄なIT公共事業ではないか
 この平成26年6月3日の試算での効果の大部分は、仮にマイナンバーによる効率化で税務職員を税の調査・徴収に回せれば税が2400億円増収するというもので、国会審議でも徴税職員を増やせば増やすほど税が増収するという空論だと批判されたものです。
 効果が明らかにされないまま、制度の導入だけが進んでいます。これでは無駄なIT公共事業と批判されても仕方ありません。

「子育てワンストップサービス」の実施は自治体で判断を

質問2)マイナポータルについて。

(1) マイナポータルを活用したサービス検索・電子申請機能等の提供の契約業者、契約金額、プロジェクト実施計画書を示されたい。

<回答要旨>

 2016年12月27日に委託契約は株式会社NTTデータに契約金額11億7720万円で決まった。プロジェクト実施計画はできているが、セキュリティの記載もあるので示すことはできない。
(2) 子育てワンストップサービスの開始は7月と説明されている。しかし市区町村では予算措置、事務フローの整備、システム改修・契約、特定個人情報保護評価の実施、職員研修等さまざまな準備が必要で、日程的に困難と思われる。なぜ急いで実施しなければならないか。

<回答要旨>

 2016年9月に総務大臣より都道府県知事宛にマイナンバーカードを活用した住民サービスの向上と地域活性化の検討について依頼し、今年の7月から地方公共団体でマイナポータルを活用した子育てワンストップサービスの積極的な導入の検討をお願いしている。
 具体的には、子育て関連施策のマイナポータルによる検索閲覧や保育所の入所手続きなど子育て関連の申請手続のオンライン申請。これは市区町村が自主的に取り組む施策だが、システム改修や職員教育やスケジュールなど、国が地方公共団体向けガイドラインを提供している。財政的支援として平成29年度と30年度にかぎりシステム整備費を特別地方交付税措置の対象とするなど、市区町村の自主的な取り組みを国が積極的に支援している。利用可能なインフラが整えば早期に実施していくことが望ましい。
メリット不明なまま、デメリットを無視して
自治体に実施を迫っている
 マイナポータルを使った「子育てワンストップサービス」は、マイナンバーカード普及のキラーコンテンツとして政府が期待しています。しかし子育て施策は市町村の仕事で、地域の事情に応じた様々な工夫がされ、すでに市町村ごとのホームページで事業案内をしています。それを全国で標準化してマイナポータルという全国統一の仕組みにまとめることに、どのようなメリットがあるのか不明です。
 その一方で子どもの情報という狙われやすい情報が漏洩・悪用されるリスクが高まるのではないかという不安や、都市部の保育園入園待機児問題のように地域の状況が大きく異なる施策できめ細かい対応がしにくくなるおそれもあります。また事務の効率化簡素化についても、電子申請と紙の書類が混在した手続に変わることで、かえって非効率になり手間がかかるのではないかという疑問もあります。
 これらの検討が不十分なまま実施すれば、利用されずに失敗した住基ネットの電子申請の二の舞です。しかし国は、昨年(2016年)12月中旬に自治体にガイドラインを提示し、年末に業者を決定して今年7月からスタートという、性急なスケジュールを自治体に迫っています。
マイナポータルの利用は自治体の仕事なので
自治体が住民の意見を聞きながら、自主的に判断することが必要
 内閣官房からは、あくまで市町村の仕事であり国はお願いする立場で強制するものではなく、実施時期やどのように実施するかは市町村の判断に任せるが、(電子申請はともかく)施策を登録して検索閲覧できるようにすることは7月に全国一律に近い形ではじめたいという考えが示されました。
 マイナンバー制度は国の仕事と見られがちですが、法定受託事務は番号の付番とマイナンバーカードの交付だけです(番号法第63条)。マイナポータルの利用等は自治体で行なう事務です。番号法第5条では自治体の責務として、国との連携を図りながらも、自主的かつ主体的にその地域の特性に応じた施策を実施することが規定されています。
 マイナポータルや子育てワンストップサービスの利用については、自治体は住民の意見を聞きながら住民サービスの視点から検討し、自主的・主体的に判断する必要があります。
 なお私たちとの話し合いのあと、3月17日に総務省と内閣官房は「マイナンバーカード利活用推進ロードマップ等」を発表し、マイナポータルの本格運用を10月以降に延期すると発表しました。
 » 3月17日発表「今後のスケジュール(案)について」
 担当の高市総務大臣は延期の理由を、使い勝手がよくないので「利用者目線」で改良するためと説明しています。
 » 3月17日 高市総務大臣の記者会見

国家公務員身分証にマイナンバー・カードの取得は強制しない

質問3)マイナンバーカードと職員証の一体化について

 実施状況、およびマイナンバーカードを所持しない職員への代替措置についての考えを示されたい。

<回答要旨>

 一体化は28年3月から先行4省庁で導入開始し、本年度中にプラス9省庁が運用を開始している1
 マイナンバーカードを所持しない職員への代替措置については、紙による身分証明証を発行するとともに、一時通行証を発行して対応している。  
非常勤職員でも,取得は必須ではないことが明確になりました
 国は「日本再興戦略」「世界最先端IT国家創造宣言」で、国家公務員ICカード身分証のマイナンバーカードへの一体化を打ち出しました。» こちらを参照
 しかしマイナンバーカードの取得はあくまで任意です。昨年の話し合いでも私たちは、国家公務員であれ取得の強制は法の趣旨に反すると指摘しましたが、明確な回答は得られませんでした。
 今回「取得は強制ではないので、あくまでお願い。今後もマイナンバーカードを取られない方には、紙による身分証明証と一時通行証で対応する。」と回答されました。
 また一部の省庁で非常勤職員採用の募集案内に、マイナンバーカードを身分証に使用するので用意するようにと記載していますが、非常勤職員でもマイナンバーカードをとりたくなければ同じく代替措置で行なうことが回答され、取得は必須ではないことが明確になりました。
会社や学校でも任意取得を守り、取得しない人への代替措置が必要
 現在、政府はマイナンバーカード普及のために、社員証や学生証をマイナンバーカードと一体化させようとし、会社や学校での一括申請を宣伝しています。国家公務員でも一体化は強制できないことが明確になりました。会社や学校で一括申請する場合もマイナンバーカードの任意取得を守り、一体化する場合も取得しない人への代替措置を講じることが必要です。

Note
*1 : 2016年3月先行運用開始4省庁:人事院、総務省、文科省、経産省。2016年度に運用開始9省庁:内閣府、宮内庁、公取委、金融庁、財務省、厚労省、農水省、国交省、環境省

*2017年3月3日の他の関係省庁からの回答の報告は、以下などの「聞いてみた」シリーズを参照してください。
 » 国税庁(番号未記入の扱い、金融機関の対応など)
 » 総務省(特別徴収税額決定通知書への個人番号記載、情報連携の開始など)
 » 内閣官房(費用対効果、子育てワンストップ、マイナンバーカードと職員証の一体化)
 » 個人情報保護委員会(個人情報保護委員会は機能しているか)
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