マイナンバーはいらない

post by nonumber-tom at 2017.3.21 #163
マイナンバー 省庁交渉 総務省 通知 実施時期

総務省に、市町村から事業者へのマイナンバー通知等を質す

 共通番号いらないネットは、私たちに寄せられたさまざまな疑問について関係省庁に解明を求め、2017年3月3日、関係政府機関からの説明を受けました。総務省に対しては、今年5月に市町村から事業者に通知される住民税の「特別徴収税額決定通知書」に全従業員のマイナンバーが記載される問題と、情報連携の運用開始の2点を質しました。

(1)特別徴収税額の決定通知書への個人番号記載について

決定通知書へのマイナンバー記載で漏洩・悪用の危険

 住民税を給与から天引き(特別徴収)するために、毎年5月に市町村から会社等の事業者に、全従業員の住民税の税額の決定通知書が送られます。この通知書の様式を総務省が変更し、2017年度分からマイナンバーが記載されて通知されようとしています。
 事業者はマイナンバーを扱うためには安全管理措置を整えておく必要がありますが、依然多くの事業者で未整備です。整備したところも、収集管理を委託し自社ではマイナンバーを扱わない所も多数あります。またマイナンバーの管理や利用への不安から、マイナンバーを提供していない人も少なくありません。さらにこの決定通知書を普通郵便で送ることも総務省は認めており、郵送事故の心配もあります。
 このような状態で一方的に市町村から事業者に全従業員のマイナンバーを通知することは、漏洩や不正利用をまねく危険な行為であり、自己情報コントロール権を侵害するものです。市町村はこの通知の扱いに苦慮しており、都内の多くの自治体がマイナンバーの未記載や一部記載などで通知することにしています。
 *東京保険医協会の調査結果は »こちら です。

総務省からの回答

 私たちは総務省にマイナンバーの記載について3点の質問をし、事前に文書回答を得ました。
  • 1) 市町村から各事業者に郵送される通知に記載するよう通知書の様式を変更しているが、事業者に個人番号を通知しなければならない理由は何か。
    (事前文書回答)
    特別徴収義務者と市区町村との間で、正確な個人番号が共有され、公平・公正な課税や事務の効率化が期待されるため。
  • 2) 安全管理措置が不備な事業者に通知することは、漏洩や不正利用をまねかないか。
    (事前文書回答)
    関係省庁と連携し、HPなどで安全管理措置について周知に努めている。
  • 3) 市区町村が個人番号を記載せずに通知した場合、なんらかのペナルティがあるか。
    (事前文書回答)
    地方税法に基づき、個人番号を記載する省令様式を定めているため、法令違反となる。
 この3)については、当日、以下の文書回答に差し替えられました。
  •   「特別徴収義務者用の特別徴収税額通知に記載すべき個人番号の記載をしない場合、地方税法上の罰則はないが、地方税法施行規則第3号様式により、市区町村は事業者(特別徴収義務者)に対し、個人番号を記載することとしていることから、(個人番号を)記載しないことは認められない。」

総務省は番号未記入が「法令違反」とは明言せず

 私たちはこの回答に対し、以下の問題を指摘しました。
  • *事前の文書回答では市町村が個人番号を記載しないと「法令違反となる」としていたのを、「(個人番号を)記載しないことは認められない」に変えているが、「認められない」ということと「法令違反」ということはどう違うのか。認められない法的根拠はなにか。
  • *すでに事業者は従業員から扶養控除等申告書で個人番号を収集しているにも関わらず、なぜ二重に市町村から通知しなければならないのか。
  • *郵送方法について普通郵便での郵送を認めているが、マイナンバーが漏洩した場合の責任の所在はどこか。市区町村に責任があるとするなら、書留で送付するための補助金を自治体に出す考えはないか。
  • 2016年11月25日の総務省から自治体への通知で、安全管理措置が適切に講じられるよう送付先に事務取扱部署や担当者を記載するよう求めているが、事務取扱部署や担当者を把握していない場合はどのように送付するか。また自社で個人番号を扱わないよう収集管理を委託している場合、送付先はどこになるのか。
  • *記載しないと表明している自治体に対して、総務省としてどういう対応をとるのか。
  • *個人番号を通知する理由は、特別徴収義務者と市区町村との間で正確な個人番号が共有され公平・公正な課税や事務の効率化が期待されるためとしているが、通知により具体的にどのように公平公正な課税や事務の効率化になるのか。
 しかし総務省からはマイナンバーを記載しないことが「法令違反」という発言はなく、漏洩や不正利用については事業者が安全管理措置を講じなければならないとするだけで、郵送方法は市町村が判断することと回答されただけでした。

事業者と市町村への責任転嫁は許されない

 総務省はその後 »2017年3月6日に、自治体に「個人番号記載に関するQ&A」を送付し、私たちとの質疑と同様の説明を自治体に行っていますが、私たちに回答した「(未記載でも)地方税法上の罰則はない」という説明はQ&Aには書かれていません。
 一方、事業者に対しては「番号法に違反する行為が行われ、個人情報保護委員会の命令等に違反した場合については、番号法に基づく罰則が適用されることになります」という、厳しい説明がされています。事業者が安全管理措置を整備できていない現実は考慮されていません。
 総務省の姿勢は、地方税法で様式を決めたので記載して通知せよ、漏洩や不正利用の責任は事業者と自治体が負え、というもので、とても認めることはできません。個人を正確に識別するマイナンバー付きの個人情報が漏洩すれば、振り込め詐欺や悪質な訪問販売などの犯罪集団がさまざまな個人情報を結合して悪用することが容易になります。
 5月の通知までに、マイナンバーを記載しない通知を求める声を、自治体から、事業者から、市民から早急にあげていく必要があります。

(2)情報連携の運用開始について

いつから、どのような法的根拠ではじまるか不明

 情報提供ネットワークシステムの施行状況について、以下の2点を質しました。
  • 1)昨年12月28日に施行日を5月30日とする政令が出されているが、利用開始は7月からと説明されている。いつから、何が、どのような根拠で始まるのか
  • 2)マイナンバーカード交付システムの障害原因の報告ではテスト不足も指摘されている。テストの時間をもっととるべきではないか
1)については、「内閣官房と検討中」として具体的な説明はありませんでした。5月30日の施行日前後も継続して7月に向けた運用テストを行っていくということで、「施行」の意味は不明なままでした。
2)については、時間をかけてテストを行っているとの説明です。

スケジュール優先の拙速な実施はトラブルのもと

 なおその後3月17日に総務省と内閣官房は、»「マイナンバーカード利活用推進ロードマップ等」 を発表し、情報連携の利用開始を10月以降に延期するとしています。
 *3月17日の高市総務大臣の記者会見については »こちら です。
 今後のスケジュール(案)によれば、7月中に情報連携は開始するものの本格運用(提出書類の省略化)は10月ごろに延期して、その間は試行運用として自治体や関係機関の間の習熟にあてる、という説明がされています。
 この間のマイナンバー制度の導入は、カードの普及優先、利用開始優先の無理なスケジュールで進められ、その結果マイナンバーカードの交付トラブルなどが発生してきました。広範な行政手続で利用される情報提供ネットワークシステムでトラブルが起きれば、私たちの生活に大きな影響がでます。
 スケジュールの見直しは当然ですが、運用開始前にテストの状況や情報提供ネットワークシステムの内容が、専門家や市民に検証可能な形で公開される必要があります。
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