マイナンバーはいらない

post by nonumber-tom at 2020.05.23 #282
マイナンバー 口座番号 自民党マイナンバーPT提言 新型コロナ対策

迅速かつきめ細かな給付にならず、
マイナンバー制度を改悪する自民党提言に反対します

 自民党のマイナンバーPTが5月19日にまとめた提言は、特別定額給付金のオンライン申請の混乱を招いた政府のマイナンバーカード普及方針を反省することもなく、新型コロナ対策に乗じて、マイナンバー制度の個人情報保護措置を変質させるマイナポータルでのマイナンバーと口座情報の管理や、刑事事件捜査や治安対策で預貯金口座情報を利用するためのマイナンバー付番の義務化をしようとしています。
 自由民主党マイナンバーPTは5月19日、「マイナンバー制度等の活用方策についての提言―「平時の便利、有事の安心」暮らしを支える社会インフラに―」をまとめ、20日発表しました1
 今国会での議員立法をめざすとともに、政府に実行を求めています。
 PT提言では、
  • ・特別定額給付金のオンライン申請による窓口混雑と処理遅延の解消のためのシステム増強や改善
  • ・緊急時等に国がマイナンバーを利用した迅速かつきめ細かな給付を実現するために、本人同意で預貯金口座を登録できる議員立法(「緊急時給付迅速化法」(仮称))の制定
  • ・マイナンバーカードの多機能化や、暗証番号を使わず生体認証の活用
  • ・マイナンバーの口座紐づけの義務化を目指し令和2年中に結論を得るよう政府に要請
などをうたっています。
 この提言は迅速かつきめ細やかな給付につながらないばかりか、マイナンバー制度をますます危険にするものであり、認めることはできません

[1]マイナンバー制度の普及を目的とした本末転倒な提言

 今回のPT提言は、必要な人に迅速に給付するためにはどうしたらよいか、ではなく、特別定額給付金支給で機能しなかったマイナンバー制度を活用できるようにするためにという、本末転倒な意図からまとめられています。
 今回の特別定額給付金のオンライン申請をめぐる窓口の大混雑などのトラブルは、
  • 1)マイナンバーカードが普及せず、電子証明書やマイナポータルが知られていない中での、安易なオンライン申請の推奨
  • 2)2016年のマイナンバーカード交付などたびたびトラブルを起こしている地方公共団体情報システム機構のシステムの準備不足
  • 3)現場の事務を知らない内閣府が急ごしらえで作ったオンライン申請システムによる市町村の過重な事務負担
に原因があります2
 いずれも新型コロナに乗じてマイナンバーカードの普及とマイナポータルの利用にこだわった内閣府・総務省の責任であり、まずこのような普及ありきの姿勢の反省こそ必要です。
 マイナンバー制度の利用にこだわれば、かえって円滑な給付はできなくなります。

[2]直ちに特別定額給付金のオンライン申請の中止を

 提言は「1.速やかに取り組むこと」として、オンライン申請の窓口混雑などの解消のために電子証明書関係システムの処理能力の改善・増強、マイナンバーカードの周知と更なる普及、オンライン申請のインターフェイス等の改善などをあげています。また雇用調整助成金や緊急小口貸付、自立支援給付でのマイナンバーの活用徹底を述べています。
 このような対策では、多くの住民を三密状態の中で長時間待たせている状況の速やかな改善にはなりません。すでに高松市、高知市、東大阪市、調布市、福生市、八王子市、秋田市、笛吹市、倉敷市、笠岡市、袋井市、福山市などが、次々と過重な事務負担に耐えかね、少しでも早く給付金を給付するためオンライン申請の中止や停止を発表しています(このページの右サイドトップの市区町村一覧を参照)。
 直ちにオンライン申請方式を中止して郵送申請方式に一本化するとともに、三密状態となっている窓口でのマイナンバーカード交付申請受付の一時停止をするべきです3

[3]マイナポータルでマイナンバーと振込口座を管理すべきではない

 提言では「緊急時給付迅速化法」(仮称)を議員立法し、
  • ・本人同意を前提に1人1つの給付金等の振込口座をマイナンバー付きでマイナポータルに登録・管理する
  • ・今回市区町村で取得した特別定額給付金の振込口座や連絡先情報をマイナンバーで管理し、マイナポータルに本人同意のもと提供できるようにする
  • ・国税庁や年金機構などがマイナンバー付きで管理している口座情報も、本人同意のもとマイナポータルに提供できるようにする
ことを目指すとしています。
 これは迅速かつきめ細かな給付の速やかな実現にならないばかりか、マイナンバー制度の個人情報保護措置の根幹を変質させる危険な提言です。

マイナポータルにマイナンバーは記録していません

 マイナポータルは一人一つのインターネット上の個人サイトで、マイナンバーカードの電子証明書によりアクセスする仕組みです。
 基本的人権を侵害する危険性のあるマイナンバー制度に対する個人情報保護措置の一つとして、行政機関等がマイナンバーで管理する自己情報や情報提供ネットワークシステムで提供した個人情報の提供記録を本人に表示するとともに、行政からのお知らせを端末に表示する目的で、番号法により「情報提供等記録開示システム」として設置されました。
 そのために一人一つの「利用者フォルダー」で、電子証明書の発行番号(シリアル番号)と情報提供用個人識別符号をひも付けて管理しています。マイナポータルにマイナンバーは記録されていません4

個人情報の一元管理につながる危険な提言

 マイナンバー制度の構築にあたっては、マイナポータルは「個人情報保護の観点や情報の一元管理を回避する観点から、利用者の個人情報が利用者フォルダに極力蓄積しないような仕組みとすべきである。」(情報連携基盤技術ワーキンググループ「中間とりまとめ」(平成23年7月28日)p.16)5 とされ、情報提供等記録、自己情報、お知らせ情報は一時的な保管とし保存期間経過後に自動的に消去されることになっています。
 このマイナポータルに口座情報や連絡先情報など個人の属性データを登録・管理していくことは、セキュリティ上の危険性とともに個人情報の一元管理に道を開くものです。
 さらにマイナンバー制度においては、住基ネット最高裁判決をふまえ、個人情報の一元的管理にならないよう情報連携はマイナンバーを使わずに「符号」で行い、「符号」とマイナンバーがひも付かない措置を講じるとしてきました(「社会保障・税番号大綱」p.17)。
 PT提言のようにマイナポータルにマイナンバーを記録し、マイナンバーと「符号」と電子証明書の発行番号をひも付けて管理することは、マイナンバー制度の個人情報保護措置の根幹を変質させるものです。

給付金振込先の管理は市区町村で

 給付金の申請にマイナンバーを利用すれば、マイナンバー記入の際の本人確認義務や提出書類の安全管理義務など、市区町村にさらなる負担が発生します。
 迅速かつきめ細かな給付を速やかに実現するためには、すでに行政サービスのために多くの住民の振込先口座を把握している市区町村において、給付金振込用の口座情報を管理する仕組みを検討すべきです。
 併せて、DV等被害者を危険にさらす世帯単位給付ではなく個人単位での給付や、マイナンバー制度では把握できない住民登録が設定困難な居所喪失者等や外国人等に対して、感染拡大防止のために必要な給付を可能にする検討をするべきです。

[4]マイナンバーを治安対策に利用する口座ひも付け義務化

 自民党PT提言は「2.早期実現に向けて取り組むこと」として、「緊急時・災害時の給付における預貯金口座管理をより効率化するとともに、マネーロンダリング対策やテロ資金対策の観点から」マイナンバーの預貯金口座へのひも付け義務化法案を令和3年度に国会提出するとしています。
 2015年9月に銀行口座へのマイナンバー付番(任意)のために番号法が改正されました。その際に説明された利用目的は
  • 1. 預金保険機構等によるペイオフのための預貯金額の合算において利用
  • 2. 金融機関に対する社会保障制度における資力調査や税務調査で預金情報を利用
の2点です。
 口座への付番の検討過程では、マネーロンダリング(犯罪で得た資金の洗浄)対策への利用も言われていましたが、法改正の理由としては除かれました。
 自民党PT提言は、新型コロナ対策に便乗してマネーロンダリング対策やテロ対策を利用目的に加えることで、マイナンバー制度を捜査や治安目的に利用しようとしています。

刑事事件捜査や治安対策でのマイナンバーの提供は憲法違反

 マイナンバー制度では番号法第19条等とその政令で、刑事事件捜査や治安機関へのマイナンバーの付いた個人情報の提供と保有・利用が書かれています。
 提供された情報は個人情報保護委員会の監督が及ばずマイナポータルで本人が確認することもできず、捜査・治安機関の恣意的な利用が可能になっていることが、マイナンバーの利用差止等を求める裁判で憲法違反として争われています。
 自民党PT提言は、マイナンバー制度導入の目的として政府が説明してきたことに反して、捜査・治安目的でのマイナンバー制度の利用を本格化させようとするものであり、許すことはできません。

Note

*1 自民党マイナンバーPT » マイナンバー制度等の活用方策についての提言

*2 共通番号いらないネットWebサイト » 給付金で窓口大混雑。申請は郵送で。マイナンバーカードの交付は当面中止を。

*3 共通番号いらないネットWebサイト » マイナンバーカードによる特別定額給付金の オンライン申請の中止を求める緊急要請書

*4 内閣府 特定個人情報保護評価書 » (抜粋)情報提供等記録開示システムの運営に関する事務全項目評価書 p.7-9(2015年5月。個人情報保護委員会Webサイトで公開)

*5 内閣官房 情報連携基盤技術ワーキンググループ 中間とりまとめ(2012年7月28日)

特別定額給付金オンライン申請停止等自治体一覧
(2020.6.14現在 82自治体)

<北海道>

» 北見市 5月24日をもって停止

» 恵庭市 5月29日をもって終了

» 美深町 6月7日で終了

<青森県>

» 青森市 5月27日で終了

» 弘前市 6月7日をもって受付終了

<秋田県>

» 秋田市 5月29日をもって終了

» 羽後町 6月5日まで

<福島県>

» 郡山市 5月29日で終了

<茨城県>

» 桜川市 5月30日から中止

» 利根町 6月13日から中止

<栃木県>

» 宇都宮市 5月29日23時59分をもって一時中断

<埼玉県>

» さいたま市 6月12日23時59分をもって受付終了

» 熊谷市 6月15日23時59分をもって当面休止

» 川口市 6月17日23時59分をもって停止

» 志木市 5月29日で終了

» 新座市 5月29日以降は一時的に中止

» 三郷市 5月30日から7月30日まで休止

» 宮代町 6月9日現在中止

<千葉県>

» 千葉市 6月4日までで終了

» 松戸市 6月12日をもって終了

» 旭市 5月22日午前11時59分をもって一時停止

» 習志野市 5月31日で終了

» 市原市 5月31日24時00分をもって終了

» 流山市 6月10日をもって終了

» 印西市 6月30日24時00分をもって終了

» 東庄町 5月31日受付終了

» 芝山町 6月30日までで終了

<東京都>

» 中央区 6月14日23時59分まで

» 江東区 6月7日午後11時59分で休止

» 世田谷区 6月12日23時59分をもって終了

» 杉並区 5月31日午後11時59分で終了

» 荒川区 5月25日から停止

» 足立区 5月31日で休止

» 八王子市 5月25日午前8時30分から停止

» 武蔵野市 5月30日から当面の間停止

» 府中市 5月30日から中止(5月29日まで受付)

» 調布市 5月20日午前9時から6月下旬まで停止

» 町田市 5月29日から7月31日まで休止

» 小金井市 6月6日から停止

» 国分寺市 5月26日から停止

» 福生市 5月21日から一時停止、5月25日から再開

» 東久留米市 6月1日午後11時59分から6月30日まで一時停止

» 稲城市 6月8日正午から停止

<神奈川県>

» 川崎市 6月11日午前0時に終了

» 厚木市 5月31日まで受付

<石川県>

» 宝達志水町 6月12日をもって中止

<山梨県>

» 笛吹市 5月22日をもって終了

<静岡県>

» 袋井市 5月25日から6月30日まで一時休止

» 湖西市 5月31日をもって停止

<愛知県>

» 江南市 (申請が少ない場合)、申請受付を停止することがある

<三重県>

» いなべ市 5月31日で終了

<滋賀県>

» 大津市 6月7日をもって受付終了

» 彦根市 6月15日午前0時をもって終了

» 湖南市 5月25日午前0時受付終了

» 日野町 6月15日午前0時受付終了

<京都府>

» 宇治市 5月27日で一旦中止

» 亀岡市 5月31日をもって一時休止

<大阪府>

» 大阪市 6月10日をもって終了

» 八尾市 5月30日で終了

» 泉佐野市 6月30日17時15分をもって中止

» 羽曳野市 6月8日から中止

» 東大阪市 5月27日をもって中止

<奈良県>

» 大和郡山市 6月1日17時00分で終了

» 橿原市 5月24日23時59分で終了

» 河合町 5月19日まで受付

<島根県>

» 出雲市 5月30日から当面の間停止

<岡山県>

» 岡山市 5月24日をもって終了

» 倉敷市 5月31日終了

» 笠岡市 5月24日をもって終了

<広島県>

» 福山市 5月27日をもって中止

<山口県>

»下関市 6月30日をもって終了

<香川県>

» 高松市 5月24日をもって中止

<高知県>

» 高知市 5月19日をもって終了

<福岡県>

» 直方市 6月7日23時59分をもって終了

» 小郡市 5月29日までで終了

» 大野城市 5月31日で終了

» 遠賀町 5月31日までで終了

<長崎県>

» 大村市 6月1日から一時休止

<大分県>

» 佐伯市 6月12日で終了

<宮崎県>

» 宮崎市 6月11日受付終了

<沖縄県>

» 名護市 5月27日をもって停止

» 読谷村 6月2日をもって停止

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