マイナンバーはいらない

post by nonumber-tom at 2017.12.20 #205
情報連携の拒否 記入を拒否 添付書類 本格運用

マイナンバー記入を拒否したら情報連携も止まる
「情報連携の本格運用開始に関するQ&A」について

 11月13日から情報提供ネットワークシステムの「本格運用」がはじまりましたが、11月8日に政府は「マイナンバーの提供を明示的に拒否する場合は、情報連携を行わず、申請者に添付書類の提出を求めることが適切」というQ&Aを出しました。今まではマイナンバー記入を拒否しても情報連携はされてしまうと理解されてきたので、記入を拒否すれば情報連携もされないという大きな解釈の変更です。

「マイナンバーを記入しないと情報連携も行わない」という政府見解の変更(?)

「本格運用」というが、実際は部分実施

 2017年11月13日から情報提供ネットワークシステムとマイナポータルの「本格運用」がはじまりました1。しかし本来情報連携の対象として法律に載っている1872手続きのうち、開始したのは853手続きで半分以下です。7月18日から情報連携の試行運用を始めた際に予定した940手続きの1割も、試行で不備がみつかったのか本格運用は延期になっています。
 政府は情報連携開始で添付書類の提出が不要になると宣伝していますが、何が不要になるのかわかりにくい状態です。書類を持参しなくて受付できなかったというトラブルを防ぐためには、従来どおり添付書類を持参するのが無難です。

マイナンバーを記入しないと情報連携も行わないことに

 本格運用開始直前の11月8日、内閣官房と総務省は連名で「情報連携の本格運用開始に関するQ&A」2を関係機関に示しました。その中でマイナンバー(個人番号)の記入を拒否した場合の扱いについて、注目すべき説明をしています。
 問6「申請書類にマイナンバーを記載するよう求めてもなお、申請者が記載を拒否する場合、どう対応すべきか。」に対して、「申請者がマイナンバーの提供を明示的に拒否する場合は、情報連携を行わず、申請者に添付書類の提出を求めることが適切です。」と回答しています。
 マイナンバーの記入を拒否すれば情報連携も行わないことが、明らかにされました。

いままでは記入を拒否しても情報連携は可能と説明

 いままで政府はマイナンバーの利用機関に対し、申請者がマイナンバーの提供を拒否しても地方公共団体情報システム機構からマイナンバーを取得し情報連携を行うことは可能と説明してきました。
 番号法14条では、個人番号の利用機関は個人番号利用事務を処理するために必要があるときは、住基ネットを使い地方公共団体情報システム機構に機構が保存するマイナンバーを含む本人確認情報の提供を求めることができるとなっています(会社など個人番号の「関係事務」の実施者は、提供を求めることはできない)。
 そのため私たちが「書かない番号!」を呼びかけたときに、「書かなくても、調べて情報連携はされてしまうんでしょ」と言われることがありました。

マイナンバーがなくても情報連携は可能な仕組み

 そもそも情報提供ネットワークシステムはマイナンバーを使用せず「符号」で連携するとされているため、マイナンバーがわからなくても情報連携は可能です。番号法の国会審議の際に政府が示した情報連携イメージ図には、個人番号(マイナンバー)を付番しない事務の情報連携の流れも書かれており、政府は「番号制度を広げる場合に、同じ個人番号を使わずに別の番号を使った場合でも、一対一の対応関係さえつければ情報ネットワークシステムは使えますので、そういう場合のことを想定したもの」と説明していました(衆議院内閣委員会2013年4月3日)。

国の見解変更(?)に戸惑う自治体

 ところが2017年7月ごろから政府は自治体などの問合せに対して、本人がマイナンバーの記入を拒否した場合は情報連携を行わずに従来どおりの添付書類の提出を求めて手続きするように、という説明を始めました。
 政府は従来の見解の変更だとは説明していませんが、明らかに見解が変わっています。7月18日から始まる情報連携の試行開始直前の変更のために、自治体などでは戸惑いが広がりました。
  1. 「番号提供拒否された場合に情報連携できないとする法的根拠はなにか」
  2. 「記入拒否者の情報照会をすると法律違反になるのか」
  3. 「記入拒否者の情報連携をしたことが情報提供記録をマイナポータルや開示請求してわかった場合はトラブルになるか」
  4. 「通知カードなど番号確認の書類が持参されず記入できない場合は情報連携できるのか」
  5. 「市町村では住民基本台帳でマイナンバーはわかるが、本人の同意を得てマイナンバーを調べた場合でも情報連携はできないのか」
  6. 「すでに記入拒否者に、拒否しても情報連携は行うと説明してしまっている」
  7. 「試行運用の通知に、記入なければ情報連携しないという扱いは示されていなかった」
  8. 「番号法22条では対象事務の情報連携を義務づけているが、もともと記入拒否者の情報連携は行えないということだったのか」
などの疑問が相次ぎ、明確な見解を通知するよう要望もありました。
 政府はこれら疑問をうけて、本格運用直前の11月8日になって、「情報連携の本格運用開始に関するQ&A」として見解を示しました。

Q&Aで明らかになったこと、明らかにされていないこと

 「情報連携の本格運用開始に関するQ&A」2では、
  1. 1.情報連携の実施、添付書類の省略
  2. 2.申請書にマイナンバーを記載していない方への対応
  3. 3.DV・虐待等被害者への配慮
  4. 4.広報対応
について説明しています。
 このうち「2 申請書にマイナンバーを記載していない方への対応」では、以下の説明がされています。

記入拒否者には情報連携を行わない。その法的根拠は?

 Q&Aでは、明示的に記入を拒否した場合は情報連携を行わないことが「適切」としています。しかしこの見解の法的根拠は示されず、記入拒否した場合に情報連携すると「法令違反」なのか不明です。
 自治体からの問合せに対しては、「個人番号の提供を拒否された場合に情報提供ネットワークシステムによる情報照会を行うことを明示的に禁じた法令の規定はありません」と答えていますが、Q&Aには書かれていません。

なぜ情報連携を行わないことが「適切」なのか

 記入を拒否した場合になぜ情報連携を行わないことが適切なのかの説明も、Q&Aにはありません。自治体からの質問に対しては、添付書類の省略は個別法令で義務とされている個人番号の提供が本人からなされて情報連携を行った結果として実施されるものであり、「当該義務を履行しない(個人番号を提供しない)者については、情報連携を行わないことが適切」と説明しています。
 つまり番号提供という「義務」を果たさない者には添付書類の省略という便益を提供すべきではない、という番号記入圧力を意図したもののようです。

番号確認書類を持参しなかった場合も、申請者に持参させる

 記入拒否ではなく番号確認書類を持参しなかった場合も、住基ネットや住民基本台帳で調べて記入すべきではなく、原則として申請者に番号確認書類を持参させるよう求めています。理由は、本人からの申請等による事務で情報連携のために住基ネット等からマイナンバーを取得することは、行政運営の効率化の趣旨から望ましくないから、となっています。
 番号確認書類を持参し忘れたときには、持参して出直して来い、という扱いです。「国民の利便性向上」より「行政運営の効率化」が優先するというわけです。
 ただ番号確認書類の提示が困難な場合は、各機関で判断するよう説明しています。厚労省の通知で、認知症や障害で本人の意思表示能力が著しく低下している場合等は、申請書に番号の記載を求めず住基ネットや住民基本台帳で番号確認して記載することが可能としていることをふまえての説明と思われます。

住基ネットから番号を調べて事務に利用することは可能

 一方、申請者が記入しなくても、データ連携用に中間サーバーに保存する住民情報の副本の更新など内部事務の管理に使うためなら、住基ネットからマイナンバーを取得することは差し支えないとなっています。
 このQ&Aでは番号記入を拒否すると情報連携は止まりますが、マイナンバーの利用そのものは止められません。

申請事務以外では、情報連携は可能

 また問4では、本人の申請に基づかない事務では、情報連携を行うことは差し支えないとしています。マイナンバーの利用に本人同意は不要で、本人の意思に関わりなく住基ネットからマイナンバーを取得でき、情報連携も本人同意が必要とされている事務手続(地方税関係情報3)を除き本人同意は不要だから、という理由です。
 番号の記入を拒否している人でも、申請が必要な事務では情報連携はされず、申請が必要ではない事務では情報連携がされるという、矛盾した扱いです。

Q&Aを活用し、情報連携を止めよう

マイナンバー記入拒否から情報連携の拒否へ

 今回のQ&Aは情報連携の運用にも、私たちの基本的人権にも関わる重要な見解でありながら、私たちには公開されていません(内閣府・総務省のサイトに掲載されていない)。また法的根拠も曖昧なQ&Aで見解を示し、内容も番号記入の圧力を強めることを意図した問題の多いものです。
 しかしマイナンバーの記入を拒否すれば、危険な情報連携を避けることができるのは、私たちにとって大きな意味があります。マイナンバーの記入を拒否し、情報連携を止めましょう。
 情報連携の記録は、マイナポータルを使わなくても、自己情報の開示請求によって知ることができます。記入拒否したのに情報連携されていないか、確認しましょう。

自己情報コントロール権を認めないマイナンバー制度の廃止を

 私たちは、情報提供ネットワークシステムは基本的人権(自己情報コントロール権)を侵害し、情報漏えいの危険を高め、国家による監視を容易にするものだとして反対してきました。
 「自己情報コントロール権」は、自己の個人情報が収集・保存・利用・提供される各場面において、事前にその目的を示され、その目的のための収集・利用等について同意権を行使する(=自己決定する)ことによって、自己のプライバシーを保護できる権利です。
 マイナンバー制度は「国民が自己情報をコントロールできる社会」の実現を掲げながら、収集・保存・利用・提供のすべてで本人同意を不要としています。国会で利用方法を決めれば国が個人情報を勝手に使っていいという、この時代錯誤の欠陥制度は廃止しかありません。
 今回のQ&Aは自己情報コントロール権を認めるものではありませんが、マイナンバーの記入を拒否すれば提供を止めることが可能です。Q&Aを積極的に活用して、自己情報コントロール権を認めないマイナンバー制度の廃止を目指しましょう。

Note
*1 「マイナンバー制度における「情報連携」及び「マイナポータル」の本格運用等開始」(総務省webサイト)
*2 「情報連携の本格運用開始に関するQ&A」(PDF:内閣官房・総務省 2017.11.8)
*3 「地方税情報の連携にNO」を! [1]「地方税関係情報」ってなにですか?
 「Q 本人同意が必要とされるのは、どのような行政事務ですか」参照
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