マイナンバーはいらない

post by m-toshi at 2016.01.11 #93
対政府交渉

提供者にも「間接的な義務」 ! ?
2015.12.14 対政府交渉報告

 共通番号いらないネットは2015年12月12日に集会を行い、集会宣言を採択した。12月14日にはその宣言を政府に手交するとともに、関係省庁の担当者に対して事前に提出していた質問項目を中心に交渉を行った。関係省庁は内閣官房、総務省、国税庁、厚労省である。参議院議員福島瑞穂議員に仲介をお願いし、出席いただいた。
 特に番号提供・記載について、従業員には法的義務が課されていないが、雇用主には収集の法的義務が課されているという政府のダブルスタンダードについてやりとりをしたが、最後は提供者にも「間接的な義務」があると言い出した。今回の内容をさらに今後とも追及し、番号提供者の番号提供の任意性を確保していくためのやり取りを継続していきたい。

12月14日政府要請質問項目とその回答

まとめ:共通番号いらないネット事務局 宮崎俊郎
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1 内閣府、内閣官房

1-1 実施の準備状況の遅れをどうみているか
10月5日から番号の通知が始まり、当初11月中には配布し終えるという予定だったが、今のところ12月20日まで通知が遅れている。ただし、通知の遅れは1月利用開始にとって支障はなく、予定通り1月から利用を開始する。日本年金機構関連の利用に関しては延期している。それ以外については予定通りだ。
1-2 2016年11月までに利用開始すれば法の要件は満たしているのに、なぜ1月に開始しなければならないか。
利用開始の時期というのは政令で定めることになっている。1月開始というのは特に税について2016年から利用すると1月からということが妥当だということだ。
1-3 利用開始前からすでに詐欺事件が多数発生している。しかし制度に便乗した不正な勧誘や個人情報の取得の際の通報窓口は、マイナンバー総合フリーダイヤル、消費者ホットライン、警察、特定個人情報保護委員会苦情あっせん相談窓口、市区町村などバラバラで分かりにくい。今後は利用事務等実施者での不適切な取扱いや漏えいの疑いなども発生する。これら事案の通報窓口を一本化するとともに、その対応結果について通報者に一定期間内に回答する規定を設けるなど、対応体制を整備すべきではないか。
起こっているのはいずれも便乗したものだ。問題が発生した時はフリーダイヤル等にお問い合わせいただきたい。いくつかの問い合わせ先を作っているので、どこかに連絡してもらえば対応できるような構造になっている。一本化は必要ない。今の体制でやっていきたい。
1-4 今後、利用拡大についての法案提出の予定があるか。
マイナンバー法の見直しについては法律の付則事項で施行後3年という目途が入っている。現在、利用範囲を拡大する具体的内容を持っていないが、昨年6月に閣議決定されたように今後利用範囲は拡大していく方向だ。
1-5 NHK受信料徴収について個人番号を具体的にどういうふうにして利用しようというのか、明らかにされたい。
そうした報道がなされたということは記憶にあるが、閣議決定の中にもないし、政府において検討はされていない。よって利用方法についてもわからない。
質疑 1月開始までに整えなければならない政府の通知も遅れている。介護保険関連で厚労省が出さなければならない通知がまだ出ていない。これについてはどうか。
通知をどうするかという問題もあるが、関係する役所に対しては正式なルートの前に色々と情報共有するような仕組みも設けて意思疎通やっている。そういう意味では年明けからの運用について支障の生じるようなことはない。
質疑 番号の記入がなくても社会保障等のサービスは受けられるのか。
現行においても受ける権利のある方が受けられなくなることはない。番号の提供がないと今まで通り添付書類を提出していいただかなければならないということはあるが、受給権そのものが番号を提出しないことによって消滅するということはない。

2 総務省

2-1 通知カードに同封されているリーフレットでは、「申請してね、個人番号カード」と記載されているが、「任意取得」との記載もなく、本文全7頁の大半が「個人番号」の説明や制度の目的、効果の記載は最小限に留まり、全体として「個人番号カード」申請に誘導する巧みな内容となっている。なぜ、「任意」を明記しなかったのか。
限られた紙面で、趣旨をわかりやすく説明。任意の文字こそ使っていないが、全体として任意の内容になっている。
2-2 自治体と情報提供ネットワークシステムをつなぐ中間サーバーについて、自治体に基本設計や詳細設計などの情報提供は行なうのか。行わないとしたらその理由は何か。
必要な情報を随時提供。中間サーバーのソフトウェアは、自治体が共同で設置している地方公共団体システム機構(J-LIS)がまとめてやっている。個別の自治体には随時情報提供を行っている。既存のシステムの改修、実際に利用した業務を検討する際の画面の使用など随時提供。
 自治体から、情報が足りないという指摘は無い。
2-3 総務省が特定個人情報保護評価書作成のために示した中間サーバーの説明で、「特に慎重な対応が求められる情報については自動応答を行わないように自動応答不可フラグを設定し、特定個人情報の提供を行う際に、送信内容を改めて確認し、提供を行うことで、センシティブな特定個人情報が不正に提供されるリスクに対応している。」となっている。もし送信内容を確認した結果、不正な提供の可能性があった場合、提供しないという扱いは可能か。
そもそも要件を欠いている照会は、情報提供ネットワークシステムの中でシャットアウトされる。不正な情報は、照会に至らない。
 フラグの設定は、地方公共団体において特に慎重な対応が求められるケースで、実際に照会をしてきた方とどんな形で使うのか、必要な対策はしているのか、といったことを確認するプロセスを踏んで頂くために設けている。両者で協議をして必要な確認を行った上で、適切に対応して行く制度。
2-4 個人番号カードについては、法17条「市町村長は、政令で定めるところにより、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者に対し、その者の申請により、その者に係る個人番号カードを交付するものとする」と任意としているが、(回答は内閣官房)
 1 国家公務員職員証や社員証で例外を認めず個人番号カードを持たせるとしたら、番号法違反になるのではないか。
法17条は申請しないと取得できないという意味では、強制していないという意味で任意といえるが、会社の中の規定において個人番号カードの取得を盛り込むことを禁止するものではない。個人番号カードを社員証や職員証に使うことを番号法が禁じているとは考えていない。
 2 同様に保険証としての個人番号カード利用は番号法違反ではないか。
 3 国家公務員職員証に個人番号カードを使うとのことだが個人番号が所属省庁の職員番号になるのか。
番号そのものを保険証番号や社員番号、職員番号として使用することは現行法上禁止されている。
2-5 個人番号カード申請書に添付された写真が本人のものかどうか判別するために各自治体は「顔認証システム」を導入することになったが、
 1 顔認証システムは自治体規模に関わらず、すべての自治体において使用させるのか。
質疑応答集で各自治体に示している。
  原則として全市区町村に導入し、活用することを想定している。
 2 顔認証データは認証が終了すれば消去することになっているが、将来にわたってデータを残して利用しないことを担保する何らかの措置を講じるべきだと考えるが、いかがか。
ソフトウェアについては、機構で発注し調達して全市区町村で使う。そもそもシステム自体、データを一切保存しない仕様になっている。使用するとき、交付申請者に対して、同一人性の判定だけに使いかつ画像は判定以外に使用せず、保存されないということを説明するという形で事務処理を各自治体に示している。
2-6 個人番号カードによるコンビニ交付を積極的に推奨しているが、不正取得等に対する「本人通知制度」が多くの自治体で制度化されているなか、戸籍謄抄本等の交付は止めるべきではないか。
個人番号カードと暗証番号、所持認証と知識認証、2重にクリアした場合にその所持者、同一世帯のものに限って証明書をとれるという仕組み。第三者を阻む、きわめて狭く、多重認証をかけているので不正取得がきわめて困難。
2-7 何らかの事情で住民登録されていない住民には個人番号がふられていない。こうした人に対しても他の人と同様のサービスを保障し、個人番号がないことで不利益は生じないということを確認されたい。(回答は内閣官房)
個人番号の提供のないことをもって、生活保護が受けられないということはない。ただし、マイナポータルへのアクセスは個人番号カードがないとできないとか、本人確認の際に通知カードともう1種類の身分証を用意しなければならないとか不便が発生する。
2-8 高市総務大臣は記者会見(11月24日)において、通知カード送付の遅れによる番号記入ができない事態が発生することについて、「最終的にはマイナンバーは住基ネットで確認することができますので、すぐに具体のデメリットが生じることはないと考えております。」と答えている。個人に個人番号を書かせることによって記載された書類は特定個人情報となり、厳重な管理が必要となり、さらには個人番号流出の危険性は高まるので、申告書(申請書)に個人番号を記入する必要がないのではないのか。
マイナンバーを使うことで、行政事務の効率化がはかられる。書かないと今までと同じ。メリットが出てこなくなる。マイナンバーを記載すると住所を書かなくて済むという、その場でのメリットはどんどん具体化して行く。書いて頂くことでメリットがでる。
質疑 個人番号カードの申請は、任意(選択制)だと書くべき。コンビニ交付の危険性を周知すべき。
任意という言葉は無いが、「申請してね」「申請できる」であり、義務という誤解を生じる言葉は使っていない。パンフレットは配布済みなので、ほかのPR方法で誤解の無いような、より理解を頂くように努めていく。
 コンビニ交付は、きわめて厳格なシステム。2010年度から蓄積があり、好評なサービス。悪用されないよう、改竄防止のための仕組み、専用回線など、大きな事故の無い形で、百団体が導入、2千万人が利用。セキュリティ面で十二分な目配りをしながらやっていく。説明もしっかりしていく。
質疑 顔認証について 人口の少ない自治体は目視で可能ではないか?
交付の時に使うのは、確認のためだけ。目視も可能。例外もあり得る。機械で確認することに意味がある。

3 国税庁

3-1 番号制度に関するQ&Anp;Aで、個人番号の記載は税法上の義務であることを説明するが、記入を拒否された場合でも受理し、記入しないことに罰則はないことを明らかにしている。しかし記入を拒むものがいると、税務調査等で不利な扱いを受けるのではないかと心配する声がある。記入しないことで不利な扱いはしないことを明確に周知するべきではないか。
個人番号の記載がない場合は、記載いただくよう指導していただきたい。それでも記載がない場合は個人番号をお持ちでないという事情がある場合もあるので、受理する。しかし、個人番号記載は税法上の義務なので、税の執行関係で国税庁として個人番号の記載がないことで不利な扱いはしないということを明確に示すことは難しい。
3-2 記入を求めたにもかかわらず拒まれた際に、その経緯を記録しておくようQ&Anp;Aで説明しているが、記録がない場合、どのような扱いがされるか。
個人番号記入を拒まれた際の手続きは法令上の義務ではない。記入を求めたにもかかわらず拒まれた際の記録がなかったとしても国税庁や税務署が何らかの措置をすることはない。記録の意味は、個人番号をいただけないから支払調書に個人番号を記載できないのか、個人番号をいただいたのに支払調書に記載を忘れたのか、後々にどちらか判明させるためだ。事業者の側の個人番号の取り扱いがしっかりしているということを示すということだ。
3-3 個人事業者に法人番号が付番されていないが、個人番号を記載することの不利益は生じないか。
個人事業者についても一定の支払調書を提出しているところについては法令上法人番号を記載することになっているが、その際は個人番号を受け取った事業者がしっかり管理するということが法令上定められている。
3-4 一般的に、所得税を源泉徴収しないで、報酬や謝礼を支払っているケースが見られるが、その適正化を検討しているのか。
私どもは執行機関として報酬や謝礼を支払っていただくとき、法令上源泉徴収が必要なケースについて源泉徴収していただくよう広報したり、指導している。
3-5 「番号の猶予規定が設けられている法定調書」は、どういう理由で設けられたのか説明されたい。
法定調書の提出対象となる配当などについては原則として支払いの都度金融機関に対して支払いを受けられる方は告知しなければならないが、契約締結の際に金融機関に氏名住所等を告知し、その都度本人確認を受けるのは大変煩瑣なものだからしなくてもよいというみなし告知という制度があり、そのうえでお客さんに個人番号の告知を求める必要はないだろうということで3年の猶予期間が設けられたと考えている。
質疑 個人番号を書かなかった時に不利益があるのか。
そういうことを広報することはできない。
質疑 実質的な不利益はないということでしょう?
不利益というのはどういうことを指しているのか。
質疑 とても感覚的なものかもしれない。でもあえて不利益はないと断言してほしい。<
質疑 書かなかったりすると税務調査に入るなんてことはないのでしょうね。
それはない。
質疑 個人事業者に対しても法人番号を付与できれば、個人番号記載の必要がなくて済むのになぜ法人番号を与えないのか。
個人事業主はあくまで税の申告を個人として行っている。番号法においては個人事業主を法人とみなすのは困難である。
質疑 事業を行っている方について法人番号と個人番号の2推類の体系で管理するのはとてもやりづらいのではないのか。個人番号はかなり厳重に保護されなければならないが法人番号はオープンだ。混在すると管理がかなり面倒ではないのか。
そんなことはない。

4 厚生労働省

4-1 介護保険の個人番号利用の留意点を事務連絡で示すのはいつか。
関係個所との調整もほぼついたので、近日中にお示しできる。介護保険最新情報という介護保険の情報を流すものがあるが、HP上でもお示しする。
4-2 11月に雇用保険業務Q&Anp;Aで、個人番号の提供を拒否された場合も受理し手続きすることが回答されているが、その他の事務でも同様に扱うか。そのことを明らかにすべきではないか。
雇用保険と基本的には同様の取り扱いである。
4-3 生活保護については、個人番号の提供が保護の要件ではないことを明らかにしているが、すべての事務について提供が手続きの要件ではないことを自治体に通知すべきではないか。
個人番号を書けないお年寄りの方もいらっしゃり、個人番号の記載が要件ではないという言い方はともかくとして、個人番号の記載が必須ではないということについても明らかにしていきたいと考えている。
4-4 一部の会社で、就労内定者に個人番号を提供しなれければ内定取り消すとか、就業規則で個人番号の提供を義務づける、なかには給与や企業年金停止などを示唆するなどの動きがある。会社はあくまで個人番号の関係事務であり、利用事務実施者である国税庁や厚生労働省が番号記載がなくても受理する扱いを示している以上、従業員や内定者に番号提供を義務づけることは許されない。不適切な扱いをしないよう、労働行政で指導すべきではないか。
4-5 個人番号カードと社員証の一体化を政府は提案しているが、就業規則等で社員証を個人番号カードとすることを規定すると、事実上、個人番号カードの所持は強制される。このように個人番号カードの任意取得に反して取得が雇用関係のなかで強制されることがないよう、労働行政の中で指導すべきではないか。
(4,5併せて回答)確かに事業主には従業員から番号を集めて届出をしなければならないという義務がある。また番号を集める際には本人確認をしなければならないということになっている。実際にどういうふうに従業員から集めるかは労使の自治の中に任されていると考えている。だから基本的には指導という形ではない。

(包括的な質疑)

質疑 4点目、5点目に関しては労働行政で指導すべきだと聞いているんでが、厚労省としてはこうした内容では行政指導すべきではないと考えているのか。
就業規則というのは労基法上、労働基準監督署に提出する義務がある。就業規則を全部指導すべきものではなく、その中において法的に違反があるとか明確に指導すべき事項がある場合指導すべきである。
質疑 マイナンバーの記載がないから採用を取り消すことがあっても、労働監督の立場からいえば、就業規則に書いてあれば「どうぞ」という立場ですか?
解雇が有効かどうかは私人間の問題なので指導できない。ただし、マイナンバーに関して労働基準法違反があれば指導できる。しかし就業規則に載せるということについては指導できない。
質疑 内定者に個人番号を記入してこなければ内定取消だといっても行政上は問題がないと。
それはうちの管轄ではない。労働関係法制上問題出てきたらそれは当然指導の話となる。
質疑 私たちは就業規則にマイナンバーの提供等について載せることについてはおかしいと考えているが、その点については厚労省がきちんとした見解を示すべきではないのか。
(内閣官房が引き取って)ご存知の通り、提供者側には提供の法的義務は課せられていないが、集める会社側には税務情報として提出する義務が法的に課せられている。そういうところを受けて一部の事業者が従業員が番号を提供しなかったことから会社が税法違反になるということから就業規則に記載する会社が出てきていることは承知している。それが法的に違反するものでなければ、特に問題はないかと考えている。
福島 ということは実質的な強制を認めているということか。番号提供したくないというのは重要なプライバシー権であり、その権利をいかに認めるかが大切なのでは?提供しなくてもよいときちっと示してほしい。
罰則は求めないが、会社側が源泉徴収して番号を付けて出すのは義務なので、従業員が番号を提出していただかないと義務を履行できないから提供しなくていいと言うことは難しい。
質疑 国税庁は従業員が番号提供しない場合は会社がそのまま番号なしで税務書類を提出することを認めている。関係事務処理機関である会社に対してそのことを周知できないのはなぜか。
福島 会社が義務違反にならないよう従業員に働きかけるということは実質的な強制につながり番号法違反ではないのか
質疑 不適切な扱いがあった時にどこが対応してくれるのか?会社の内定取消のような事案については厚労省なのか第三者委員会なのか。
労使関係については厚労省だ。
質疑 ガイドライン違反に関して労働関係については厚労省でよいのか?
ガイドライン違反なのかどうかについては第三者委員会だ。
質疑 第三者委員会は斡旋であって解決はしてくれない。事件が起きて当該が裁判提訴でもしない限り解決しないのか。
福島 厚労省は事業主に「番号提供しない従業員がいてもそれは義務違反ではなく仕方のないことであること、強制はできないこと」を周知すべきではないのか。
従業員に直接的な提供の義務はないが、「間接的な」義務はある。内定の時点で番号提供を求めることはガイドラインに照らしても問題がある。
福島 それではそうした会社については厚労省は具体的に指導すべきではなのか。採用前に番号提供を求めてはならないという通達を出すべきではないのか。
具体的な事例については第三者委員会が判断する。
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