post by nonumber-tom at 2020.11.25 #291
デジタル庁 新型コロナ便乗 データ共同利用権 医療のデジタル化 GIGAスクール構想
2020.11.21集会報告
マイナンバー制度の際限なき拡大とデジタル化強制を問う
集会を開催
菅政権は行政・社会のデジタル化を一気呵成に進めることを目玉政策として、次期通常国会に一括関連法案の提出を検討しています。そのためデジタル庁を設置し、マイナンバー制度を拡大しようとしています。
共通番号いらないネットは11月21日、「なんでもデジタル庁ですすめていいの? マイナンバー制度の際限なき拡大に反対する集会」を、コロナ禍の制限の中で約60名の参加で開催しました。
» この集会のビデオはこちらから
菅政権の強引なデジタル化推進にNo!
デジタルを利用しなければ生活できない社会にしてはならない
今年の「骨太の方針」ではこの1年を集中改革期間として、感染症拡大の局面で現れた国民意識や行動の変化などの新たな動きを後戻りさせず社会変革の契機と捉え、通常であれば10年かかる変革を一気に進め「新たな日常」を実現すると述べています1。マイナンバーカードの利用がその鍵とされ、強引な普及が図られています。
「デジタル化で便利になるのでは」と言われますが、政府が進めようとしているデジタル化は、デジタル技術で少しずつ社会を改善していくことではなく、既存のシステムを破壊的創造(DX)してデジタルを前提とした新しい社会基盤を構築することです。デジタルを利用しなれれば暮らせない「デジタル・オンリー」の社会を作ろうとしています。
新型コロナ流行に便乗しでデジタル化を一気に推進
「骨太の方針」と同日に閣議決定されたデジタル国家戦略では、「漸進主義ではなくショックセラピー型で抜本的に移行」を原則としています2。人々の不安と混乱に乗じて社会変革するコロナショックドクトリンです。
いままで様々な課題のために進まなかったオンライン化を、新型コロナ流行をチャンスとしてトップダウンで進めるため、予算と権限を集中するデジタル庁を設置しようとしています。医療、教育、行政、働き方などから人と人とのふれあいを縮減してオンラインに置き換え「効率化」するとともに、デジタル化により行政と企業に日々蓄積される個人情報を利活用して、管理の強化と利潤を得ることが目的です。
個人情報保護をないがしろにする前のめりの利活用推進
デジタル庁構想下のマイナンバー制度の拡大に反対する!
集会では共通番号いらないネットの宮崎さんより、デジタル化の歴史とデジタル庁登場の背景を俯瞰し、マイナンバー付き個人情報を集中管理するJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)を地方共同法人からデジタル庁直轄にしたり、本人同意なしで個人情報を共同利用する「データ共同利用権」が提唱されるなど、超監視国家に道を開く危険な内容が丁寧な審議のできない一括法案で提案されようとしていることに警鐘を鳴らしました。
このデジタル化の基幹システムとしてマイナンバー制度を位置づけなおしてデジタル庁で再構築し、国と地方のシステム標準化・共同利用化をしようとしていることに対して、マイナンバー制度の利用拡大に反対し、デジタル庁による上からの押しつけに反対して対面での手続き・サービスや保険証、免許証などを存続させよう、と訴えました3。
医療のデジタル化は何を狙うか
東京保険医協会の吉田さんからは、政府の進めるマイナンバーカードの健康保険証利用について、今後もいままでどおり健康保険証での受診は可能であり、医療機関のカードリーダー設置も進んでいないことが報告され、マイナンバーカードと顔認証の普及に医療機関を利用しようとしていることを批判されました。
そして患者にも医療機関にもデメリットが多いのに進める本当の狙いは、EHR(Electric Health Record)やPHR(Personal Health Record)などデータヘルス改革を進めることにあり、医療機関から診療情報を自動的に吸い上げるシステムを構築しようとしており、医療機関の守秘義務や患者の自己情報コントロール権が侵害されることが指摘されました4。
児童生徒の情報を危険にさらすGIGAスクール構想と教育のデジタル化
個人情報保護条例を生かす会の外山さんからは、新型コロナ流行で加速するGIGAスクール構想と教育のデジタル化について、学校は日々個人情報をつくり更新していく場であり、その収集は指導のため必要最低限に止め必要がなくなれば速やかに廃棄すべきであるにもかかわらず、デジタル化された児童生徒の学習履歴や健診データを進級進学しても継承する仕組みを民間クラウド利用で作り、学校を儲けの対象にする実証実験が経産省や総務省で進められていることが報告されました。
大阪市の実証実験では、児童生徒の基本情報や成績、健康のほか、家庭や生活の様子や日常所見記録、さらに「心の天気」などの情報をデジタル化して共有し「子どもカルテ」を作成している例が紹介され、民間クラウドの利用については大阪市の個人情報審議会で懸念が指摘されルールづくりを求められていることが報告されました5。
個人情報の利活用のため個人情報保護法制と条例の改悪の動き
共通番号いらないネットの原田さんからは、個人情報の円滑な流通と利活用の支障として、3つに分かれている国の個人情報保護法を規制の緩い方に一本化するとともに、自治体の個人情報保護条例を国の規律に揃える法改正が検討されていることが報告されました。
個人情報保護は国に先駆けて1970年代から自治体が条例を制定してきました。当時政府が実施しようとした「省庁統一個人コード」が国民総背番号制として強い反対を受ける中で、自治体の電算化を国民総背番号制につなげず自治体の責任で人権を守るという住民との約束として、外部オンラインの制限や要配慮個人情報の保護など独自の規定をつくり、審議会に諮りながら運用してきました。その努力を「2000個問題」などと足蹴にして否定する改正です。
住民との信頼関係を損ない、個人情報保護法が自治体の区域の特性に応じた保護施策を規定していることにも反する改正を、自治体との協議を一方的に打ち切りながら強行しようとしていることに、自治体から異議を申し立てていこうと訴えました6, 7。
自己情報コントロール権を認めない不当な地裁判決
憲法違反のマイナンバー制度の差し止めを求める裁判は大阪以外の7地裁で判決が出されましたが、いずれも自己情報コントロール権を認めず、違法再委託などで大量の漏洩が起きていることを制度の欠陥と認めない不当な判決でした。
控訴審は新型コロナの影響もあって遅れていますが、12月1日に横浜、12月19日に福岡で控訴審開始に向けた集会が行われるなど、不当判決を覆す取り組みが進んでいます8。
自治体からの取り組みが必要
会場討論では、かつてマイナンバー制度が始まるときに自治体議員連名で反対声明を出したように自治体からの取り組みを求める意見や、日本で最初に電算条例を制定した国立市議会で11月18日に個人情報保護条例の改悪に対して慎重な検討を求める意見書9 が採択されたことなどが報告されました。