マイナンバーはいらない

post by nonumber-tom at 2018.4.22 #218
雇用保険 マイナンバー 未記載 提供 拒否

マイナンバー未記載でも
雇用保険手続きはできます

 ハローワークが雇用保険手続について、平成30年5月以降はマイナンバーの記載・添付がない場合には書類を返戻するというチラシを配布し、記載しないと手続きできなくなるのかと心配する声があがっています。しかし、従業員からマイナンバーの提供を受けられない場合は未記載の届出書を受理する、という従来の扱いは変わりません。未記載でも事業主は「本人事由によりマイナンバー届出不可」と付記して手続きできます。

マイナンバー未記載でも受理し手続きされる

 2018年3月から事業主を対象に厚労省・都道府県労働局・ハローワークが、「雇用保険手続の際には必ずマイナンバーの届出をお願いします」と題したチラシの配布やサイトへの掲載1 を始め、問題になっています。「平成30年5月以降、マイナンバーが必要な届出等にマイナンバーの記載・添付がない場合には、返戻しますので、記載・添付の上、再提出をお願いします。」という内容です。
 しかし、従来の「従業員からマイナンバーの提供を受けることが困難な場合は、記載がない届出書を受理する」という扱いに変わりがないことは、国会でも厚生労働大臣が明言しています。
 従業員から提供を受けられない場合、事業主は「本人事由によりマイナンバー届出不可」と付記して手続きするよう、厚労省・ハローワークは説明しています。

たびたび変更されたチラシ

 このハローワークのサイトに掲載されたチラシは、4月11日まで4回変更されています。なおサイトに掲載された以外にも、郵送等された別内容のチラシがあります。

1番目のチラシ2

 最初のチラシでは、「平成30年5月以降、マイナンバーの記載が必要な届出等についてマイナンバーの記載がない場合には補正のため返戻する場合があります」として、雇用保険被保険者資格取得届、雇用保険被保険者資格喪失届、高年齢雇用継続給付支給申請、育児休業給付支給申請、介護休業給付支給申請の手続きの際に、マイナンバーの記載を求めています。
 そして末尾に、「マイナンバーの届出は雇用保険の各種申請・届出を行う際に課された義務であり、必 要なマイナンバーを記載しないことは法令違反に当たります。
 マイナンバーの届出がない場合には、社会保険又はその他の制度の運用上支障をきたすこととなりますので、必ず提出するようお願いします。」 と書かれていました。

2番目のチラシ2

 3月28日に掲載された次のチラシでは、「平成30年5月以降、マイナンバーの記載が必要な届出等にマイナンバーの記載がない場合には、返戻しますので、記載の上、再提出をお願いします。」と、未記載なら必ず返戻する文面に変わりました。
 一方末尾の注記は、「マイナンバーは雇用保険の各種申請・届出を行う際の様式において記載が必要な事項として厚生労働省令で定められたものです。記載がない場合はこれに反することになります。」と変わり、「法令違反」「制度の運用上支障」という表現はされていません。

3番目のチラシ2

 4月2日に更新されたチラシでは届出の内容が詳しくなりましたが、その中で「マイナンバー未届の場合には返戻する」と説明しています。
 また末尾の注記に、「届出等に当たり、ご不明な点、お困りの点等ございましたら、ハローワークにご相談ください。」が追加されています。

4番目のチラシ2

 4月11日に更新されたチラシでは4月3日の国会審議をうけて、マイナンバー(個人番号)未記載でも受理することが、末尾の注記の後に以下のとおり細かな字で追加されました。

本人からマイナンバーの提供を拒否された場合の取扱いについて

 雇用保険手続の届出に当たって個人番号を記載することは、事業主においては法令で定められた義務であることをご理解いただいた上で、従業員に個人番号の提供を求めていただくこととなりますが、仮にマイナンバーの提供を拒否された場合には、その旨を申し出ていただいた上で受理することとしており、個人番号の記載がないことをもって、ハローワークが雇用保険手続の届出を受理しないということはありません。  なお、電子申請による届出等の場合は各届出等の備考欄(資格喪失届は備考欄がないため、社会保険労務士欄の直下のスペース)に「本人事由によりマイナンバー届出不可」の記載をお願いします。

マイナンバーの提供は義務ではない

 番号法には、従業員にマイナンバーの記載を義務づける規定はありません。個別の法律(雇用保険法)による施行規則で、事業主が提出する届出書にマイナンバーの記載欄が設けられましたが、従業員に提出を義務づける規定はありません。また未記載で提出しても、事業主に罰則の規定はありません。
 事業主は従業員からマイナンバーの提供を受ける際には、必ず利用目的を明示するとともに、厳格な本人確認(番号確認と身元確認)が義務づけられています(番号法16条)。他の目的でマイナンバーを利用することは違反です。また提供をうけたマイナンバーの漏えい、滅失、毀損等を防止する安全管理措置を整えておく必要があります3

厚労大臣、マイナンバー未記載でも受理することを明言

 4月3日の参議院厚生労働委員会で倉林委員がこの問題を取り上げました。議事録と資料が倉林委員のサイトに掲載されています4
 加藤厚生労働大臣は、書類不備として返戻を求めるとしているが、本人がマイナンバー未提出の場合は受理して差し支えないという取扱いにしている、と答弁しました。

加藤厚生労働大臣答弁(議事録(未定稿)より)

「マイナンバーが記載事項となっている届出等であるにもかかわらずマイナンバーの記載がないまま提出された場合には、原則届出等の内容に不備があるものとして返戻するということをここで述べさせていただいておりますが、しかしながら、本人がマイナンバーを届けていないなどの場合については、当該届出等を受理することとして差し支えないという、そうした取扱いにしている」
 この答弁に対し倉林委員より、マイナンバーを集めるために返戻をし続けるのは本来の必要な届けができなくなり本末転倒、現場に未記載でも受理することの周知徹底が必要と指摘し、厚生労働大臣は

・できるだけお書きをいただくのは、様々な利便もあり、本人にとっても必要

・その上において、マイナンバーの届出を本人が行わない場合は、事業主の方から強制的にどうのということはできない

・それによって資格取得が遅れることは必ずしもいいことではない

・本人が提供を拒み未記載でも受理する対応をしている追加的に指示をしているところでもあり、ホームページ等の改定を通じて幅広く事業主等に対しても周知をしていきたい

と答弁しています。

未記載が従業員の提供拒否であれば必ず受理を

 4月11日、チラシとともに「雇用保険業務等における社会保障・税番号制度への対応に係るQ&A」5 が掲載されました。
 Q13で「従業員から個人番号の提供を拒否された場合、雇用保険手続についてどのような取扱いとなるのか。」の問いに、以下の答えをしています。

○雇用保険手続の届出に当たって個人番号を記載することは、事業主においては法令で定められた義務であることをご理解いただいた上で、従業員に個人番号の提供を求めることとなります。

 仮に提供を拒否された場合には、ハローワークが一定の確認等をした上で受理することとしています。

 (他にQ10、Q12、Q14、Q16参照。)

*個人番号の記載がないことのみをもって、ハローワークが雇用保険手続の届出を受理しないということはありません。

 このQ&Aでも、従業員から提供を拒否されて個人番号が未記載でも受理するとしています。ただ個人番号の記載がないこと「のみ」をもって受理しないことはないとか、「一定の確認等をした上で」受理するなど、若干曖昧な書き方がされています。
 「一定の確認」が何の確認かの説明はありません。参照するとされているQ10、Q12、Q14、Q16は、手続き毎に同一従業員の番号を重複して提出するのかとか、離職し再度雇用した場合や従業員が退職して取得困難な場合などについての扱いの説明で、提供を拒否された場合とは関係ありません。
 「仮に提供を拒否された場合には、ハローワークが一定の確認等をした上で受理することとしています。」の文は、更新前のQ&A(平成28年2月8日版)では「仮に提供を拒否された場合には、個人番号欄を空欄の状態で雇用保険手続の届出をしていただくこととなります。」となっていました。
 マイナンバー未記載の理由が従業員の提供拒否であることがわかれば、必ず受理することを明確にすべきです。

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