4 自治体の独自利用事務の情報連携
「マイナンバー(共通番号) 不安だらけの情報連携」学習会報告(5)
番号法では自治体は条例を作ることで、社会保障・税・災害に関する事務であればマイナンバーの独自利用が認められている(第9条2)。具体的には法律にない事務を追加するほか、自治体の中で法律で規定された以外 の用途で庁 内連携する場合(たとえば税情報を福祉手当の受給要件の確認に使う)や、自治体内で別の機関(たとえば市長部局と教育委員会)で情報連携する場合(第19条10)に、条例を作らなければならない。
マイナンバー制度が入ったために、いままで行っていた庁内情報連携がそのままではできなくなり、自治体では大変苦労して条例を作っている。余計な事務が増えこれで効率化といえるのか。自治体関係者以外にはとてもわかりにくい仕組みだ。
4-1 2015 年番号利用拡大法による追加
この自治体の独自利用事務で、他の自治体や機関に特定個人情報を照会したい場合はどうするか。たとえば高校等の就学支援金事務は法定事務なので他の自治体に税額の照会はできるが、県独自の条例で加算措置を上乗せしたり支給対象を拡張した部分については、情報提供ネットワークシステムが利用できず別途税資料の提出が必要になる。2013年に成立した番号法には条例事務の情報連携の規定はなく、第19条14の特定個人情報保護委員会規則により情報連携を認めることを想定していた。そのために第19条7の情報提供ネットワークシステムによる提供に準じた委員会規則(準7号規則)が検討され、また認める事務が例示されてきた。
この自治体の独自利用事務で、他の自治体や機関に特定個人情報を照会したい場合はどうするか。たとえば高校等の就学支援金事
ところが2015年9月の番号法改正で、独自利用事務の情報連携について新たに第19条8が新設された。
なぜわざわざ新設が必要なのか、16国会でもまったく審議されずわからなかった。情報公開市民センターにより情報公開された内閣法制局への説明資料をみて、理由がわかった。当初の番号法9条2の条例と委員会規則による情報連携では、委員会の恣意的判断によって「国民の予見」を超えて利用提供が広がるおそれがあることと、情報提供ネットワークシステムを介さず個人情報保護措置が講じられない情報連携が広がるおそれがあることが理由だった。つまり改正前の番号法では、最高裁住基ネット判決の「管理・利用等が法令等の根拠に基づき」という合憲性の要件をクリアできないと国は考えたことになる。4-2 自治体独自利用事務の情報連携の問題点
第一に、法定事務を超えて利用・連携が拡大するため、番号法別表を見ただけでは利用提供事務がわからない。事務はサイトに公表する予定だが、それらも調べなければ市民は自分の情報がどう使われるか把握できない。しかも就学援助事務や子どもの医療費助成など、法律では提供が認められない事務でも提供が広がる。
第二に、当初の番号法では委員会規則で利用拡大すると合憲性の要件を満たせないと国は考えていた。個人情報を「保護」する委員会の規則によって個人情報が保護できないというのは変な話だが、のちに5-4でふれるように委員会規則ですでに法律の枠外で情報連携が拡大している。個人情報の保護というより利用促進の委員会ではないか。姿勢が問われる。
第三に、自治体が提供しない事務を規定した条例(「限定条例」)が未整備なまま、利用条例だけができている。法定の事務では提供が義務づけられるが(番号法 22 条)、条例で利用する事務の場合、情報提供を求められた自治体側に提供する義務はない。番号法26条のただし書きにより、自治体は条例で提供する特定個人情報を限定し個人情報保護委員会に届けておけば提供しないことができる。自治体の自治的判断によって提供をコントロールできる唯一の規定であり、限定条例の制定と活用を検討すべきだ。
また次にふれるように、地方税情報を他自治体などに条例利用事務で提供するためには、本人同意が必要であり、それをどう担保するかが課題になる。
●この報告のYouTubuビデオ(2016.7.13 於東京・文京シビックセンター)
報告:学習会「マイナンバー(共通番号) 不安だらけの情報連携」
△原田さんの報告1時間37分/質疑応答33分
------------------------------------------------
●報告のもくじとリンク
5 情報提供ネットワークシステム以外のマイナンバーによる照会・連携
この報告の全文(15.9Mバイト)
この報告のすべてのスライド(35.6Mバイト)
マイナンバー(共通番号)
不安だらけの情報連携
2016.7.13学習会報告
この報告の全文とスライド資料集
この報告のビデオ(YouTube)
△報告:1時間37分/質疑:33分