マイナンバーはいらない

post by nonumber-tom at 2016.8.10 #130
情報連携 学習会報告

1 マイナンバー制度とその危険性

「マイナンバー(共通番号) 不安だらけの情報連携」学習会報告(2)

原田富弘

1-1 マイナンバー制度とは何か

▲クリックで拡大/縮小slide 6

 ひとことで言えば、個人を識別して、生涯追跡し、個人情報を丸見えにするための社会基盤だ。制度の元になった 2011 年 6 月に政府がまとめた「社会保障・税番号大綱」では、一人ひとりの情報を生涯を通じて「タテ」につなげ、制度横断的に分野を超えて「ヨコ」につなげるために番号制度が必要だ、と述べている。[5-6]

 社会保障と税のための制度と誤解されているが、番号法の目的(第 1 条)にはそのような目的の特定は書かれていない。識別機能を活用して効率的な情報管理と迅速な情報授受をすること、つまり行政事務で情報連携することが目的だ。利用事務に追加すれば何にでも使えるようになっており、どこまで使われるかわからない。[7]

 番号制度の仕組みは、付番と情報連携と本人確認の3つがセットになっている。付番によって住民票のある全員に重複のない番号を付けて識別を可能にし、利用の際には本人確認を義務づけているが、それらは正確な情報連携のために必要とされる。[8](タイトル下のスライド)

▲クリックで拡大/縮小slide 10

 当面利用できる事務は、番号法第 9 条と別表第一に定められている。年金や雇用保険のほか、母子・障害者・介護・生活保護などの福祉や健康保険、そして税など、プライバシーに深く関わる事務が列挙されているほか、自治体の条例でも利用事務を定めることができる。生まれてから死ぬまで、マイナンバーやカードなしでは生きられない社会を作ろうとしている。[9-11]

1-2 政府も情報連携の危険性は認識している

▲クリックで拡大/縮小slide 12

 「社会保障・税番号大綱」では、様々な個人情報が本人の意思と無関係に名寄せ・結合されると、本人の意図しない個人の全体像が勝手に形成され、その結果自由な自己決定に基づいて行動することが困難となり、権利の行使に抑制的になり(萎縮効果)、「民主主義の危機をも招くおそれがあるとの意見があることも看過してはならない」と、自ら書いている。[12]

 この「萎縮効果」には、権力に弱みを握られているのではないかと心配して、政治的な発言がしにくくなるなど表現の自由の抑制だけでなく、たとえば求職活動で生活保護を受けたことがバレるのではないかと心配して失業し困窮しても生活保護の申請をためらうなど、福祉サービスを受ける権利の行使に萎縮する場合もある。

 「大綱」のこの指摘は、住基ネット違憲訴訟判決を踏まえたものだ。住基ネットを違憲とした2005 年 5 月の金沢地裁判決では、特定の必要な手続きのために行政機関に住民が提供した個人情報が、データマッチングされて集められると行政の前で丸裸にされるが如き状態になり、萎縮効果が働いて個人の人格的自律が脅かされると判断した。その後の上級審で合憲判決に変わったが、これらの危険性は認めている。 2008 年 3 月の最高裁判決も、「個人情報を一元的に管理することができる機関又は主体は存在しない」などの理由で、これらの危険性は具体化しないということが合憲の理由だった。[13-16]

▲クリックで拡大/縮小slide 17

 マイナンバー制度でも政府はこれらの危険性があることをふまえ、制度上の個人情報保護措置やシステム上の安全措置によって危険性が現実化しないよう安心安全を確保すると説明している。逆に言えば、これらの措置が機能しなければ、危険性は現実化する。[17]

1-3 さまざまな方法で行われる情報連携

▲クリックで拡大/縮小slide 17

 番号法では情報提供が認められる場合として、第 19 条で 15 項目を列挙している。その一つが19 条7の情報提供ネットワークシステムによる提供だ。しかし 19 条ではそのほかに、自治体の独自利用事務の情報連携や、情報提供ネットワークシステム以外にマイナンバーを使って情報を照合して提供する場合などもある。さらに最近政府は、個人番号カードに搭載された公的個人認証の電子証明書を使った情報連携を検討している。

  • ・情報提供ネットワークシステムによる情報連携
  • ・自治体の独自利用事務の情報連携
  • ・情報提供ネットワークシステム以外のマイナンバーによる照会・連携
  • ・公的個人認証、個人番号カードを使った情報連携

次章からは、これらを順次見ていきたい。[19-20]

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