マイナンバーはいらない

post by nonumber-tom at 2017.4.14 #167

マイナンバー制度の要=J-LIS(地方公共団体情報システム機構)法
I.地方公共団体情報システム機構(J-LIS)とは

原田富弘
 
J-LIS(地方公共団体情報システム機構)の業務や組織、およびマイナンバー制度実施にともなって多発した初期トラブルは、今回の改正法案の内容と大きく関わります。そこでここでは、J-LISの概要と初期のトラブルについて簡単に整理しておきます。現在J-LISは、法制度の上では「地方公共団体が共同して運営する地方共同法人」とされていますが、その前身は国の外郭の財団法人(天下り団体)で、現在でも総務大臣が大きな監督権限を持っています。

1 マイナンバー制度の中核をなすJ-LIS

(1)J-LISの業務

 地方公共団体情報システム機構(J-LIS)は、マイナンバーシステムの中核をなす以下のような業務を行う組織です。
  1. ・マイナンバーシステムの基礎システムである住基ネットの全国センター
  2. ・マイナンバーカードに内蔵されている公的個人認証サービス
  3. ・住民票コードからのマイナンバーの生成と通知カードの送付
  4. ・マイナンバーカードの交付とカード管理システム
  5. ・自治体の情報連携の要となる中間サーバー・プラットフォームの設置運用
  6. ・証明書のコンビニ交付のための証明書交付センターの設置運用
  7. ・自治体の庁内LANを相互に接続する行政専用のネットワークLGWAN1(総合行政ネットワーク)の運用

(2)問題を抱えた「地方自治情報センター」を改組したJ-LIS

 もともとは自治体のコンピュータ化を推進する総務省の天下り団体「財団法人地方自治情報センター」で、民主党政権下の2010年の事業仕分けでは、天下りの自粛と役員報酬の見直し、第三者による契約のチェックの必要などの批判が集中していました。
 それが2013年5月に成立した番号関連4法の一つとして地方公共団体情報システム機構法が成立し、地方3団体(全国知事会、全国市長会、全国町村会)が選任する設立委員が総務大臣の認可を得て設立する形をとって、2014年4月1日に地方公共団体が共同して運営する「地方共同法人」として再出発しました 地方公共団体情報システム機構法案の概要:2013年03月06日)
 その際、地方自治情報センターが行っていた「住基ネットの指定情報処理機関」と、一般財団法人自治体衛星通信機構が行っていた「公的個人認証サービスの指定認証機関」を引き継いでいます。

(3)総務大臣が大きな権限を持つ「地方共同法人」

 J-LISの組織は以下のようになっています。
  1. ・地方の代表が参画する「代表者会議」を置き、定款変更、理事長及び監事の任命・解任、事業計画、予算、決算等の機構の重要事項を議決
  2. ・代表者会議が任命する外部有識者からなる「経営審議委員会」
  3. ・理事長及び監事は代表者会議が任命、副理事長及び理事は理事長が代表者会議の同意を得て任命
  4. ・総務大臣は機構に対し、報告・立入検査、違法行為等の是正の要求等を行うことができる。

2 住民情報を集中管理するJ-LIS

 J-LISの管理する個人情報について、マイナンバー違憲東京訴訟の求釈明に国は次のように回答しています(国の「答弁書」はこちら)。

(1) 住基ネット関係

 本人確認情報(住民票に記載されている氏名、生年月日、性別、住所、個人番号、住民票コード並びに変更情報(住民基本台帳法施行令第30条の5で定める住民票の記載等に関する事項)
 保存期間=住基法施行令30条の7の規定により定める期間(50年を経過する日まで)

(2) マイナンバーカード管理システム関係

 氏名(外国人の通称を含む)、出生の年月日、男女の別、住所、連絡先、個人番号、顔写真情報
 保存期間=個人番号カード交付申請書を受理した日から15年間

(3) 公的個人認証サービス関係

 氏名(外国人の通称)、出生の年月日,男女の別,住所,住民票コード、電子証明書の発行番号。
 保存期間=電子証明書有効期間の満了日翌日から10年を経過する日まで。

(4)自治体中間サーバー・プラットフォーム関係

 また自治体の中間サーバー・プラットフォームでは、全住民登録者の情報連携用の符号、団体内統一宛名番号、情報連携の対象となる特定個人情報の副本を記録管理していますが、これについては「それぞれの地方公共団体が収集,利用,保存,提供等するものであり,サーバーの運用を行う機構からは当該個人情報にアクセスすることはできず,関与を行うことのできないシステム構成となっている」と説明しています。

3 トラブル続きのJ-LIS

 2015年10月5日のマイナンバー制度の施行以降、J-LISのシステムトラブルが続きました。

(1) 通知カード送付のトラブル

 通知カード作成情報をJ-LISから国立印刷局に提供できなかったため、東京都葛飾区で約5000世帯に通知漏れが発生

(2) マイナンバーカード交付システムのトラブル

 2016年1月から始まったマイナンバーカードの交付ではトラブルが続発し、交付が半年以上遅延する異常事態が起きました。
  1. ・J-LISの中継サーバートラブルで個人番号カードの交付が停止(2016年1月に少なくとも6回発生)
  2. ・J-LISの管理サーバートラブルで個人番号カードの交付が3時間半停止(2016年2月22日)
  3. ・個人番号カードの不具合(1月21日発送の約2万6千枚で電子証明書データに不具合)
  4. ・市町村の交付処理画面の展開が重く処理が遅延するトラブル
  5. ・個人番号カードのICチップが使用不能になり再発行するトラブル
  6. ・電子証明書の記載事項の変更で、変更前の住所に特定の文字が含まれている場合に、機構から市区町村へ配付している業務アプリで変更処理ができないトラブル(2016年4月5日佐賀新聞)
*以上については、共通番号いらないネットの質問書(2016年5月25日)参照
  1. ・2016年10月22日、マイナンバーカード管理システムの中継サーバー1台が業務開始から一時正常に動作せず、一部の市区町村のカード交付業務などに影響 »個人番号カード管理システムにおける障害について(J-LIS:2016年10月24日)

(3) 別人に同一のマイナンバーが付番されたトラブル

 2016年2月23日に香川県坂出市と長野市の2人の男性に同一の個人番号が割り振られていたことが発覚。原因は住民票コードが重複付番されていたこと。長野市の男性が2010年ごろに転入した際、長野市職員が氏名の読み方と生年月日が同一だった坂出市の男性と誤認したことが原因とみられているが、住民票コードの重複付番をJ-LISは5年間発見できなかった。

(4) LGWAN1のシステムトラブル

 2017年2月13日、コンビニ交付で使用するLGWANのシステムトラブルにより、マイナンバーカードを利用したコンビニ交付が約3時間停止し、19自治体169件の交付に支障(2月13日に発生した「ネットワークの障害による一部団体におけるコンビニ交付サービスの支障」に係る再発防止策について(報道発表))。

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Note
●もくじ
» 地方公共団体情報システム機構(J-LIS)法等改正法案の問題点
» I 地方公共団体情報システム機構(J-LIS)とは
» II J-LIS法改正案の概要と問題点
●J-LISへの質問と回答
» 地方公共団体情報システム機構(J-LIS)への質問書提出(2016.5.25)
» 地方公共団体情報システム機構(J-LIS)からの回答(2016.10.25)
» 同上質問書/回答書(pdf版)
*photo素材 : ぱくたそ / モデル:佐竹パイナップル
●注1:LGWAN
全国の都道府県および市町村の庁内LANを結ぶ広域ネットワーク。住基ネットとはまったく別の全国ネットワーク。運営はJ-LISが行い、国の機関の広域ネットワークである霞が関WAN(K-WAN)と接続されている。