共通番号いらないネット 結成宣言
2013年5月24日、共通番号法は参議院をたいした波乱もなく通過し、成立してしまった。
その時点で共通番号法に反対した市民は残念ながら少数にとどまった。住基ネットを市民監視の道具にできなかった失敗がいまだに推進派のトラウマとなっているなか、共通番号は装いを新たに「税と社会保障」のための番号として民主党政権時代に登場した。税と社会保障に対する「不公平感」を抱き続けてきた市民は「不公平がいくらかでも解消されるなら」といった淡い期待を共通番号に抱きがちだ。
私たちは今こそ、そうした幻想を抱く市民に訴えよう。「共通番号が税と社会保障の不公平を是正することは決してない。真に手を差し伸べるべき人を大事にできる社会が良い。制度の狭間にある人を救えるしくみがある社会が良い。それらと逆行する共通番号制度はいらない」と。そして「共通番号の真の目的は市民に対する管理や監視の日常化と精緻化である」ことを。
共通番号法は、その後に成立した秘密法、そして今通常国会に登場しそうな盗聴法の改悪、共謀罪の新設といった安倍政権が整備をすすめる治安立法の一環であることを私たちは強調しておきたい。住民票コードと異なり、警察や公安機関が利用できる番号であることを忘れてはならない。
住基ネット違憲訴訟で最高裁はデータマッチングしないから安全だと市民の訴えを斥けた。住基ネットと異なり、データマッチングを目的とした共通番号は違憲の疑いをぬぐえない。今後違憲訴訟を提起することも射程に入れて運動を進めていこう。
2015年10月、住民登録のあるすべての日本人と外国人に個人番号が、納税義務のあるあらゆる団体に法人番号が通知される。個人番号は通知カードによって世帯単位で住所地に簡易書留で送付される。住民票上の住所に住んでいない人や住民票をもてない人には届かない。またDV等の問題で届いてはいけない人に届いてしまう危険性も存在する。私たちは通知カードが届いて初めて共通番号に向き合う市民に対して、「内国人登録証/国内パスポート」として私たちを識別し追跡監視するICカード=個人番号カードを申請しないよう呼びかける。
自治体は住基や税、国保などの事務で個人番号を利用するために、システム改修、条例改正、「特定個人情報保護評価」の実施などを迫られている。しかし政省令等の遅れのなかで自治体の準備は困難を極めている。
「特定個人情報保護評価」への反対意見の表明、自治体への質問書提出など共通番号に反対する市民運動が各地ではじまっている。自治体議会では予算の在り方をめぐって議論がたたかわされており、個人情報のオンライン結合を原則禁止から原則可能へとベクトルをひっくりかえす条例改定が議案にあがろうとしている。
民間事業者も、従業員等の個人番号の管理が必要になるにもかかわらず、ほとんど知られておらず準備も手つかずだ。このまま2016年1月に実施されれば、個人番号が漏えいしてプライバシー侵害が起き、民間事業者は管理責任を問われて処罰される事態が発生する。
共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会(略称:共通番号いらないネット)は全国のさまざまな共通番号反対運動を緩やかにネットワークすることをその目的とする。
共通番号の危険性は住基ネットの比ではない。自治体では、国から押し付けられた膨大な制度改定作業のなかで、ほんとうに必要な制度なのか、市民に求められていないのではないかという疑念の声が広がっている。各地で番号の通知や個人番号カード交付、そして情報提供ネットワークによるデータマッチングが始まれば、さまざまな矛盾が噴出してくるだろう。
共通番号いらないネットは、そうしたさまざまな矛盾と格闘する全国各地の人々を支える組織でありたい。「共通番号はいらない」と明確に言える市民とともに、「ほんとうに必要なのか」と疑問をいだく自治体職員や市民を広範につないでいきたい。今は少数派でしかない共通番号反対運動を徐々に拡大していき、最終的には共通番号を廃止に追い込む大きな流れとしていきたい。
私たちは高らかに宣言する。私たちの社会に共通番号はいらないと。
私たちは共通番号を廃止に追い込むまであきらめずに抵抗を止めないことを。
共通番号いらないネット結成集会 参加者一同